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熱帯多雨林気候下で生産された熱帯雨林を材料とする泥炭土壌が分布する。玄武岩塩基性岩を母材とする地域では暗赤色のラトソル、フェラルソルが分布する。

このような様々な土壌が農業資源として利用されているが、個々の土壌の持つ特徴を用いた土壌分類に基づき、500万分の1の縮尺で示されたFAO/Unesco世界土壌図(1985)より、東南アジア、南アジアでは問題はあるが耕地として利用され、今後さらに利用が高まる予想される土壌の可耕地面積に対する分布割合は52%を占める。特にAcrisol(酸性で風化の進んだ粘上の集積層を持つ土壌)が最も高く38%を示し、また、問題土壌の多くが粘土集積層を持つことから物理的阻害要因別面積割合も24.5%であり排水不良土が12.9%の高い割合を示している3)

 

3 アジアの水田潅漑

 

アジアを象徴する土地利用形態は水田であり、水稲が食糧基盤となっている。水田稲作が畑作に比べ生産性と持続性の面から優れていることは衆目の一致した見解である。この背景にはほとんどの水田が沖積平野に存在することから堆積作用が常時働き肥沃度を維持向上させる。一方、畑作では土壌侵食と養分の溶脱が進行し、農耕によりさらに加速する。畑作では土壌侵食を抑えても、土壌肥沃度を維持向上させるためには施肥以外方法はない。水田稲作では土地は平均化され、畦畔で囲われるため侵食は防止され、さらに潅漑水により土壌は還元状態となるため、一部養分を可給態に変えるとともに潅漑水からの養分供給も期待できる。この結果、原則的には水田稲作は休閑の必要はないが、最も重要な制限因子は潅漑水の確保である。

アジアの水田稲作はモンスーンの降雨に依存するため、雨期とともに作付けし、乾期に収穫する年1回の作付け体系であった。このような天水依存の水田稲作は作付け時期の変動と早魃の影響を受けやすく、農民は小規模な潅漑設備の構築に多大な努力を払ってきた。

 

 

 

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