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機会費用は上昇し始め、時として急激に上昇する。ファルケンマークの基準と比較して、成熟する水利経済という考えが魅力的なのは、水が豊富にあっても危機がどのようにして発生しうるかを説明するのに役立つ点にある。従ってこの考えはますますアジアに適していることになる。

さらにこれは方法をも示している。徐々に技術的、環境的、政治的に複雑な流域間で水を輸送することで新しい水源を開発するプロジェクトを建設するか、あるいは不可使用の水を処理することにより、水経済は成熟段階から拡大の一つの段階に移行することができる。

新たなプロジェクトは経費を増加し、政府および海外の貸主は補助金の拠出を次第にしぶる傾向にあるため、その代わりに節約するという考え方が出てきた。これらの中で顕著なものとしては、経済的手段への使用と低価値の用途から高価値の用途に水を変換することがある。

高価値の用途の一つには人間の健康がある。人口と水の関係はしばしば安全な飲み水と衛生施設への接点であると言い換えることができる。可能な限りすべての人間に個人および家事の用途に比較的清潔な水を供給する必要があることは明らかである。その正確な経路を追跡することはきわめて困難であるが、アジアの病気は、特に貧困層の間では、水と衛生に関連している(第4章を参照)。しかしこれは水質および貧しい人でも平等に「その場で」利用できるかという問題で、利用可能な水の総量の問題ではない。

 

4 水と環境

 

アジア開発銀行の1996年の調査では、67人のアジア環境政策作成官のうち16人が、水汚染と淡水の枯渇をこの地域で最も深刻な環境問題としている10。「枯渇」とは、水の危機と説明する人々が使用する一般的な用語である。水において、枯渇とは相対的に短い期間における状態をいい、経済と密接な関係があることに注意するとわかりやすいであろう。たいていの場合は、水文循環(降雨、蒸発、浸透、流出など)により資

 

 

 

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