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第3章 氷海用船舶の基本性能に関する研究調査

 

3.1 はじめに

NSR航行商船の開発に関しては、平成5年度から7年度に実施された「北極海航路最適船の研究」においてロシア沿岸部の厳しい喫水及び内陸河川の一部航行を考慮した喫水8mの所謂「浅喫水型氷海商船」が開発された。

一方、経済性の追及においては船舶のサイズが重要なファクターであり、一般的にはより大型の船型が望ましい。日本-欧州間の貨物輸送を考えた場合、比較的喫水を確保できるNSRの北側のルートを航行すると想定すると、より競争力のある商船開発の可能性がある。そこで、本年度は前回開発した最適船型の思想を踏襲しながら、より喫水の大きい大型の商船の開発を試みた。さらに、第2章において述べた様にINSROP BOX-Bにおいて検討が進められている経済性評価の総合シミュレーションの前段の検討として、どのパラメータが経済性にどの程度影響するかを大まかに把握しておくことを目的に、本船を対象にした経済性の概略検討を実施した。本章においてはそれらの結果について述べる。

 

3.2節においてはまず、対象とするべき商船のタイプの選定を荷動きの将来予測データを基に行った結果を記述した。荷動きの予測からはヨーロッパー極東間においてはコンテナ輸送ニーズの急激な増加が予測されているが、従来のコンテナ船が高速であること、また定時運航の問題等から、NSRの利用上のメリットは小さいと判断し、開発対象としてはコンテナの次に荷動きの増加が見込まれるバルクキャリアを選定した。次に、最大喫水として12.5mを設定した場合、最大載荷重量をとれる商船を目標として行った砕氷バルクキャリアの基本計画、船体設計及びプロペラの設計について記述した。

 

3.3節においては、砕氷性能、開水中推進性能等を確認するべく実施した水槽模型試験及びその結果について記述した。実験はNKK及び船舶技術研究所において実施した。初期計画段階で設定した砕氷能力、推進性能と主機馬力の関係において、砕氷性能はほぼ妥当な結果が得られたが、開水中推進性能については初期に設定した船速をややショートする結果となった。

 

3.4節においては、3.3節の結果を反映して主機馬力の見直しを行い、スエズ運河経由の場合と比較しながら経済性の概略検討を実施した。経済性に影響を与えるいくつかのパラメータの影響度についても検討を実施している。本格的なシミュレーションは来年度のINSROP BOX-Bの研究として計画されているが、本経済性検討はその際の一つの目安となると考えられる。

 

 

 

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