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3.2 河川・湖沼・沿岸域の環境問題

 

沿岸域は人間との関わりが深く、人類に対して多くの恵みを与えている。水量、水生生物、自然美あるいは浸水機能などの様々な要素があり、包括的かつ総合的な見地から環境保全対策を推進していくことが求められている。陸上で生じた汚染物質は河川などを流れて海に運ばれるため、流域全体を視野に入れた広域的な水環境の保全と修復の観点が必要となる。人間のみならず、海洋生物にとっても沿岸域は、産卵や孵化、稚魚の成長にとって重要であり、多種多様な生物が共生する生態系を育む高い生産の場となっている。

河川・湖沼・沿岸域の水質改善は進展してきてはいるものの、人々の期待や要望を満たすほどの効果が挙がっていないと評価されるのが実状であろう。昭和40年代に見られたような、人命を脅かすような重大な環境破壊は解消され、各種の水質調査結果を見ても水質は全般的に改善されている。しかし、有機汚濁については依然として環境基準を達成しておらず、湖沼や内湾などの閉鎖性水域や住宅密集地域を流れる河川の中には、依然として水質汚濁の著しいものがある。この大きな原因は、窒素やリンの流入による富栄養化であり、水圏環境を破壊する要因が、特定の産業・特定の工場から生活者の一人ひとりに移行してきていることを意味する。水圏環境の環境被害に加害者と被害者の明確な区別はなくなり、一般の生活者が加害者となっているのである。

水源や流域における水質保全や水環境の保全・創出、おいしい水への志向など、水資源の質の向上について国民の要望は高まりつつある。河川・湖沼・沿岸域の水環境は、水源や流域の環境に大きく依存する。森林破壊やダム建造、河川の改修など流域の変化が沿岸域の水質や生態系へ影響を及ぼすのである。流域の樹木一本一本が沿岸域の環境を支えていると言っても過言ではない。

このため、河川・湖沼・沿岸域を対象とする環境問題は広範多岐に及び、環境保全対策の必要な課題も多い。上述の考え方のもとに今後実施すべき環境研究、環境技術開発の個別の課題をできる限り網羅的に取り上げ、整理を行った(表 3-1)。

 

 

 

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