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製作し、熱処理反応炉(図3.1.2)で試験を行った。熱処理反応炉の温度分布を図3.1.3に示す。

コイルの熱処理の結果、ケーブル間の絶縁に問題があることが解りバインダーの除去方法とケーブルの表面酸化の兼ねあわせについて検討を行い、反応処理方法を決めることにした。

絶縁材料としてガラス繊維を用いるためにはバインダーの処理が問題となるが、クロムメッキ導体の特性を生かし、空気中での加熱でバインダーを飛ばした後にアルゴン雰囲気での加熱を行い。超電導物質生成反応を行わせる方法を追求した。

空気中における200℃の加熱で良い結果が得られたが、巻き線状態では200℃の加熱では不十分と思われる。また、シランをバインダーとして用いたシリカやセラミックス繊維等の新素材で絶縁処理した線材で、試験を行い良好な結果を得たが、まだこれらの新素材は厚みが大きく実用には問題がある。

ハーフターンコイルでは、セラミックスシートを用いて絶縁し、熱処理後カプトンシートと取り替えるという手法をとったが、実際の磁石では異なったアプローチが必要である。

 

b) クエンチ時の挙動

 

Nb3Snは転移温度が高いこと、高温処理のために安定化銅のRRRが極めて大きくなることから従来の合金線材と異なったクエンチ挙動が予想されるが、実際的な実験データについては、まだ十分に調べられていない。この問題は、本研究における実験でも一つの課題となっている。そこで高磁界実験装置を作って12T磁場中で励磁実験を行った。その結果、従来の範疇からはずれた極端に遅いクエンチ伝搬が観測された。この実験ではかなり短い間隔でのポテンシャルタップが観測のために有効であることがわかった。

D20高磁界実験装置の諸元を表3.1.3に、断面形状を図3.1.4に、概略構造を図3.1.5に、全景写真を写真3.1.4に示す。

 

3.1.5 実験用コイル

 

以上の結果に基づき実験用コイルの設計・製作を行うこととした。実験用コイルの製作工程を図3.1.6に示す。

 

a) コイルエンドパーツの設計

実験用Nb3Sn超電導コイルによる高磁界試験装置での特性試験では、わずか50mmの空間に高電流を流すため、コイルを製作する上の最大の問題点は端部、特に電流導入部の設計である。これまで直線部については磁場計算と構造解析が中心課題で「ANSYS」などの計算コードが確立されている。端部についても欧州CERNで「ROXY」が開発され、ダイポール磁石の複雑な形状、ケーブルの積み重なりが取り扱えるようになった。本実験用Nb3Sn超電導コイルの設計でもこれらの手法をつかった。しかしながら、ケーブル引き出し部を含むコイル端部については、複雑な三次元形状となり、また工作精度を上げるためNC加工が必要であることから、Parametric Technology社のCADソフト「Pro/E」を用いての三次元のモデリングを行った。

 

 

 

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