日本財団 図書館


3.1.2 本年度の経過

 

本年度は、NbSnを用いた実験用超電導コイル(以下実験用コイルと言う)の製作に先立ち、基礎データを把握するためコイルを試作し(以下試作コイルと言う)直線部分の巻き線状況や絶縁特性を調査した。また、NbSnを用いたハーフターンコイルを製作し、熱処理後のケーブル間の絶縁特性等について調査した。

実験用コイルの設計としては、コイル性能に大きく影響するコイル端部部品(エンドパーツ)の設計を行い、NC加工データの作成および実験用コイルの固定用エポキシ樹脂含浸装置の設計製作を行った。

なお、NbSnと同じ化合物系超電導体にNbAlがある。NbAlは機械的性能が高く、将来有望な超電導体であるが、NbSnに比べて臨界電流が低いためまだ実用的には用いられていない。しかし、最近の材料研究の進展により、12T以上の高磁界で高い電流密度を持つものが見いだされ注目されている。

日本で製作したNbAl素線をLBLでケーブル化する事を試み、初めてNbAlケーブルの製作に成功した。NbAlケーブルは30素線の台形成形捩線でSSC規格の仕上がりになっている。

このNbAlのケーブルを用いてハーフターンコイルを製作し、LBLのD20高磁界実験装置で高磁界中におけるコイルのクエンチ時の伝播特性等を調査した。

 

3.1.3 試作コイル

 

NbSn試作コイルには、クロムメッキを施したNbSn線材を用い、絶縁にはSグラスファイバーによる被覆を行った。コイルの主要寸法は、直線長さ1m、外径50mmの1/4クワドルポール巻き6ターンで、巻き線治具の材質はアルミ青銅を用いた。実験用NbSn試作コイルの諸元を表3.1.1に、断面形状を写真3.1.1に、使用したNbSn超電導線材の諸元を表3.1.2に、NbSn超電導線材を図3.1.1に示す。

コイル端部(コイルエンドパーツ)の形状については別項に述べる問題点が残されているので直線部を主眼点として試作コイルの巻き線を行った。巻き線は写真3.1.2に示す巻き線機を使って行った。巻き線機の操作は、コンピュータで5軸の制御を行いながら巻き線を行う。巻き線はプリミティブなソフトウエアでの動作であり逐次コマンドの投入を行っている。巻き線機は全工程を自動化することとして開発されている。試作コイルの巻き線状況を写真3.1.3に示す。

試作コイルは、巻き線後、強化絶縁を行い、カラーの取付、エポキシによる固定を行って断面観察のために切断した。

超電導導体配置に大きな乱れはなく、巻き線は設計通りに行われた。このコイルを窒素温度までの冷却したが絶縁破壊等の問題は発生しなかった。

 

3.1.4 ハーフターンコイル

 

a) コイルの熱処理

 

NbSnおよびNbAl超電導体の熱処理反応特性を把握するためハーフターンコイルを

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION