NOは高温燃焼過程において生成する窒素酸化物であり、主に燃料中の含有窒素や燃焼空気中の窒素と酸素との反応によって生成する。その後大気中で酸化されて、毒性が強く、刺激性の強いNO2になる。N2Oは光化学スモッグをつくり出す一連の光化学反応過程に関与しているという証拠がなく、大気汚染物質とは見なされていない。 ここではNOおよびNO2の大気中での化学的性質について概説する。
1.2.1 一酸化窒素(NO)
一酸化窒素の分子軌道の形とエネルギー準位を図1-2に示す[1]。 1σ、2σの軌道はO原子、N原子の1s軌道でありNO結合には直接関与しない。3σ、1πに2電子ずつ入り、これらはNO結合に直接関与する結合性軌道である。4σはO原子に、5σはN原子に局在している非結合性軌道である。
NOの15個の電子のうち、最後の一つは反結合性軌道の2πに入っており、結果的に N-O結合は2.5重結合になる。結合距離は1.15Å、結合エネルギーは153kcal/molである。
NOの酸素によるNO2への酸化は気相で無触媒の条件でも進行する。
2NO + O2 → 2NO2 (1-1)
このときの圧平衡定数Kpは(1-2)式のように
計算される[4]。
log Kp = 5124T-1 - 1.7log T + 0.005T + 2.893 (1-2)
このことは、0.1〜3%の濃度でNOを空気中に混合させると、室温ではほぼ100%の、500℃では15%のNOがNO2に転化することを意味している。しかし、正反応の速度 r は(1-3)式に示す通り、NOの濃度に強く依存することがわかる。
r = k P(NO)2 P(O2) (1-3)
たとえば2ppm程度のNOの場合、50%転化するのに30時間以上必要となる[5]。