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第2章 最適触媒システムの設計

 

2.1 運転状態による船舶からの排ガス組成等の変化の調査

 

2.1.1 小型船舶を巡る環境汚染物質の排出規制に関する内外動向

 

四方を海に囲まれ、貿易出国である我が国にとって物流や交通手段としての船舶の持つ重要性は言うまでもない。現在、我が国の船舶に使用されている推進用主機関はほとんどが熱効率のよいディーゼル機関である。このディーゼル機関が排出する物質のうち、大気汚染物質として規制の対象が指摘されているのがNOx, SOxなどである。

近年の規模の環境問題に対する認識の高さから、陸にある大気汚染物質排出源については、固定発生源、移動発生源を問わず、種々の規制が行われているが、海上の船舶からの排出については、我国はもとより世界的にも、これまで何の規制も施されていなかった。これは、船舶の運航する範囲が極めて広く、しかも一般的には人々が生活する領域から離れていることに起因している。

しかしながら、国際海事機関(International Maritime Organization: IMO)では、1988年に開催された第26回MEPC(Marine Environmental Pollution Committee: 海洋環境保護委員会)において、ノルウェーから船舶の大気汚染防止に関する事項を委員会の検討課題に取り上げるべきであるとの提案がなされ、合意された。

船舶から排出される環境汚染物質の規制問題を国際的な場で討議しているのは、国連の専門機関の一つであるこの国際海事機関である。これまで、エンジン排ガスに関する規制はなく、船舶用ディーゼル機関は熱効率の向上を最優先に開発が行われ、排ガス対策はほとんど行われなかった。国際海事機関の専門部会の一つである海洋環境保護委員会で船舶排ガス問題が正式議題として取り上げられ討議されている。船舶の排出する大気汚染物質, フロン(CFC), ハロン, NOx, SOx, VOC(Volatile Organic Compounds: 揮発性有機物)などの大気汚染物質に対しても規制すべき達成時期が示された。IMOが提案した大気汚染物質の低減目標およびその達成時期を表2.1-1に示す。フロンやハロンはオゾン層を破壊し、人間に健康被害をもたらす物質として最近注目を集めているものである。

 

 

 

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