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1)継続発展型研究開発

○背景

図6-2に示すように、既存型船舶では環境問題への対応や安全性向上が要求されるとともに、より一層の経済性の向上、特に船舶のライフサイクルベースで見たコスト低減が求められている。

一方、造船所では、研究開発資源の不足により、既存型船舶の改善、特に環境、安全への対応のための個別企業ベースでの技術開発が難しい状況にあるのに加え、より一層のコストダウンが求められているのが現状である。

これらの現状を打開するためには、個別企業を超えたレベルでのコストダウンへの対応、あるいは外部機関、特に公的機関による環境、安全への対応のための技術開発が必要となる。ただし、これらのコストダウンと技術開発はサバイバルのためではなく、成熟市場での高シェア獲得による設備の効率的運用を確立するものであり、得られた収益を後述する創造発展型技術開発に投入することにより、船舶の競争力向上のための技術開発を、好循環の資金運用により実現することを目指すものである。

 

○対策と体制の考え方

一層のコストダウンと先進安全船、あるいはトータルクリーンシップを実現し、高度に差別化された船舶を開発するための1つの方策として、船舶のパッケージ化・標準船化があり、実現の可能性の高い船種から取り組んでいく必要がある。船舶建造のパッケージ化には、船の標準化という考え方も有効になってくるが、パッケージ化即標準船建造ということではなく、研究開発から建造、メンテナンスまでを集約化、共同化することにより、あらゆる継続発展型船舶を設計・建造できるようなメソドロジー・バンクを構築することが1つの目標となる。

標準船化では、船主との連携が実現すればより効果的であり、例えば船主協会が研究開発のファンドを持って、そのような標準船の開発のイニシアティブをとり、協会側で「ジャパンスペック」を構築するという方法も考えられる。

パッケージ化・標準船化は造船所を中心とした推進体制が必要であり、開発、設計、機器購入の共同化はもとより、営業や建造の共同化あるいは棲み分けも視野に入れる必要がある。また、生産プロセスの情報化も、コスト削減に寄与すると考えられる。

船舶のライフサイクルにわたっての安全性を向上させる先進安全船や、それを情報面からサポートするCISS(Computer Integrated Shipping and Shipbuilding Systems)の開発は標準化と密接な関係を持つものと考えられる。

この場合、例えばCISSの運営をコンサルティング会社的なところに委託する方法も考えられる。CISSにしても先進安全船にしても、ライフサイクルにわたっての環境への負荷と、それに伴うコスト評価シミュレーションを行うことができることが、それらの実効的な運用図6-2 継続発展型研究開発の背景と方向

 

 

 

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