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5-3 わが国と北欧諸国の研究開発環境の比較

 

ここでは、わが国の研究開発環境と現地調査の対象となった北欧諸国の研究開発環境を比較し、特に今後の造船業における研究開発に対して参考となりそうな点を抽出すると以下のようにまとめられる。

 

○北欧共通の特徴的な研究開発環境

ノルウェーにおけるノルウェー研究審議会(NRC)やMARINTEKのような機関は、北欧の他国でも共通的に見られるが、そのような機関自体が日本には存在しない。また、応用開発レベルでの国際的な連携や目標達成度による(厳しい)プロジェクトマネジメントも、あまり見られない。

参考になりうる点をまとめると以下のようになる。

 

・プロジェクト・コーディネータ的役割を果たす中立的な組織の存在(TEKES、NRC、

NUTEK)

・民間からの受託研究を主業務とする研究開発機関(VTT、MARINTEK、SSPA)

・海外からの受託研究の積極的な受注(MARINTEK、SSPA)

・北欧あるいはEUレベルでの共同研究開発の存在

・主に目標達成度によるプロジェクトの管理と評価(中止もありうる)(Kvaerner、 

MARINTEK、DNV)

 

○各国における特徴的な研究開発環境

日本には見られない各国の研究開発環境をまとめると以下のようになるが、基本的に産学官、あるいは国際間で非常に強い連携を持ちながら共同研究開発を盛んに進めているという点と、ニーズに根差した研究開発を行っているという点が大きな特徴である。

特に、後者の例としては、フィンランドにおいて商品化コーディネータとして重要な役割を果たすDeltamarin や、ノルウェーにおいて研究開発プロジェクトでイニシアティブをとるノルウェー船主協会が特筆される存在である。

 

(a)フィンランド

・バーチャルな組織による効率的な運営(少ない人材の効率的な活用法)(MIF)

・在学中に取り組んでいた企業との共同研究テーマを、卒業後もそのまま持って同企業に就職させるというリクルートの仕組み(ヘルシンキ工科大学)

・産学間での研究者同士のつながりを重視する姿勢(MIF)

・造船所のマーケティング部門からの研究開発プロジェクトテーマの提案(TEKES)

・研究機関における産業界とのコーディネータ役の存在(VTT)

・エンドユーザから出された新型船コンセプトのプロジェクト化(VTT)

・商品化コーディネータとして重要な役割を果たすコンサルティング会社(Deltamarin)

・新しい技術によるメリット(性能的メリット、生産プロセスでのメリット等)をすぐに計算し、「トータルエコノミー」を提示できるデータ保有力・設計力(Deltamarin)

・メリット提示用プロポーザルは、基本的に情報発信用として活用(Deltamarin)

・新技術情報及びニーズ情報収集のための研究者のフットワーク(Deltamarin)

 

 

 

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