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あ い さ つ

 

本報告書は、競艇公益資金による日本財団の平成9年度補助事業として実施した「高度技術創出環境に関する調査研究」の成果を取りまとめたものである。

世界の造船業界は、成熟市場の中でさらなる大競争時代を迎えようとしている。現在経済危機に直面してはいるものの、船舶建造に関しては非常に高い潜在力を持っている韓国の追い上げや、東欧諸国、あるいはアメリカの造船業における艦船指向から商船指向への変化等が、その背景を象徴するものである。

一方、わが国の造船業を見ると、世界有数の船舶建造技術を有し、依然として世界トップシェアを維持しているものの、船価低迷によりさらなる厳しい建造コストの削減を求められているとともに、労働者の高齢化の進展、団塊世代の大量退職に備えた優秀な人材の確保への対応にも迫られている。

このような背景のもと、今後も世界の造船業の中でリーダシップを取り、世界の船腹需要に対して責任を果たしていくためには、厳しい事業環境の中でも、高度な技術を効率的に生み出していける研究開発環境を整え、国際競争力のある高付加価値商品を継続的に世に出していけるような体制を、新たな観点から整備していく必要がある。

そこで当財団では、船舶関連の技術開発に従事する研究開発者・技術者及び研究開発管理者に対するアンケート調査により、わが国における研究開発環境の現状を把握するとともに、高度技術の創出という観点から参考になる他産業、及び海外の研究開発体制等の事例を調査し、わが国造船業との比較等を行うことにより、高度な技術の創出を促進するような環境のあり方について取りまとめ、最後に高度技術創出のための新しい研究開発体制について提言を行った。

なお、本事業を実施するにあたっては、社団法人日本造船研究協会 顧問 菅井和夫氏を委員長とする「高度技術創出環境に関する調査研究委員会」、及び東京大学大学院工学系研究科船舶海洋工学専攻宮田秀明教授を部会長とする「同委員会ワーキング部会」の各委員による熱心なご審議・ご検討内容、及びアンケート調査にご協力いただいた各造船所、各大学、運輸省船舶技術研究所等の研究者の方々によるご意見等を中心に報告書を取りまとめたほか、株式会社三菱総合研究所をはじめ、内外の多くの関係者のご協力並びにご尽力により完遂したものであり、これらの方々に対して感謝の意を表する次第である。

 

平成10年3月

 

財団法人 シップ・アンド・オーシャン財団 

会 長  今 市 憲 作 

 

 

 

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