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2) 系統別システム・インテグレーションの推進

船舶の建造に当っては、造船業と舶用工業との間の多大な企業間業務が存在しており、造船業と舶用工業との連携強化、造船所と舶用機器メーカーとの協調による設計・建造のコスト削減は、造船・舶用工業界にとって重要な課題である。

巨大建造物である船舶においては、系統別に個別の機能ユニット、機器をうまく組み合わせて如何にコスト・ミニマムに仕上げていくかが生産性向上の重要な要素と考えられる。このためには、造船所と舶用機器メーカー間での生産分業、造船所間での船種・船型別等の生産分業によって専門性を高めると同時に、機器等を機能ユニットとして組み上げていくことでの手戻りの削減や、船舶オペレータにとっての使いやすさと船舶マネジメント会社にとっての保守容易性等を同時に達成していく、システム・インテグレーションの推進が必要であろう。

例えば、機関室の総合艤装図の作成工程では、機器配置、配管、ダクト、電路などの船殻部材と機器との取り合い、干渉チェック等を行いながら、性能を満足させる設計が行われるが、これを情報処理の観点からとらえるとモデルとして情報を階層化することによって、情報の処理コストを削減し、設計のみならず生産現場においても情報処理の効率化を追求する余地がある。プロダクト情報の形でノウハウを集約し、建造・操船によって実証されたモデルをもとに編集設計等を行うことによって設計・建造期間の短縮と生産性の向上が可能となろう。

また、優れた舶用機器の開発と船種・船型別の船内プラントのモジュール化を推進することによって造船・舶用工業間、造船所内での情報処理の効率化、生産現場の生産性向上等が期待でき、造船・舶用工業界が相互に協力して取り組むべき課題と考えられる。このような視点に立って、EDI、CALS技術等を用いた組織間の必要な情報の共有及び業務の電子情報処理化を推進していくことが重要である。

 

3) コンカレント・エンジニアリングと設計・建造プロセスのリエンジニアリングの推進船舶の設計においては、基本設計における性能検討から、技術調整を経て、部材や機器との取り合いを考慮した部品の最終寸法が決定される。船舶の設計工程は、基本設計、機能設計、詳細設計、現図工程が刺身状に重なった同時並行作業で進められていく。

設計の早期の段階で、船殻、艤装、機器、生産、保守技術者等の協調作業によって、船舶のモデルをコンピューター上に作り、このモデルを中心に、ブロック分割等の工作情報の決定、鋼材などのバルク材の把握、機器・艤装品の発注、生産管理計画の決定などを同時並行的に進めることができれば、生産開始までの工期短縮、仕掛りの減少、情報伝達ロスによる手戻りの削減等が期待できる。また、舶用機器の製造においても仕様の調整等が整流化されれば、舶用工事事業者の製造プロセスの合理化が期待できる。

このような設計の上流から建造に至る統合的な情報の管理とそれによる設計・生産管理は、情報化技術の援用なくしては、成立しえないものである。

プロダクト・モデル情報の共有を中心としたコンカレント・エンジニアリングの推進とそのための設計・建造工程のリエンジニアリング(中間工程を削減する等の業務の抜本的見直し)は、情報化を活用した生産性向上の有力な手段と考えられる。

 

 

 

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