日本財団 図書館


環境・安全問題や物流のモーダルシフトを促進させるために研究開発の重要性が高まっているが、年々造船業各社の研究開発技術者数、予算、施設が縮小されつつある。省コスト設計技術や生産技術の改革などを含めた研究開発力は、各社の競争力の源泉である。ただし、今後中長期的に各社の研究開発リソースが減少する可能性がある場合、産業全体として造船分野の技術開発を促進する方策が重要になる。

今までの議論を図表II.6.3-2に整理する。今後ますます国際的な競争が激しくなる状況下で、さらなる発展を可能とする情報基盤の構築等による効率的な事業環境の実現を目指すとき、各業界の密度の濃いさらなる連携が求められる。

産業として生産性を高めるためには、「技術」、「設備」などの規模を拡大し生産効率を高めることが重要な方策の一つである。このためには、歴史的経緯から個々に小規模化している経営資源を有機的に結びつける企業連携が重要になる。

第二に、造船・舶用工業の中核業務であり、今までの強みの源泉である生産基盤をさらに強化することが課題となる。これ迄生産基盤は、熟練職員等による人間系の処理で高い生産性を確保してきたが、これを強化するためには、各社の業務プロセス改善によるシステム化・効率化の追求とともに、企業連携の強化によるさらなる生産能力の質的向上が課題となる。

例えば、機器や部分品のモジュール化による設計の効率化や、設計や生産部門ごとに相互補完的に専門化した企業の協業などの新しい取り組みが必要になる。

第三は、産業全体の研究開発基盤の強化である。メガフロート、FPSO等のように個々の機器における改良ではなく船舶システム全体としての開発が必要な案件が増えていること、及び各社ごとの研究開発資源が縮小しつつあることから、造船・舶用工業等関連する産業全体の知を結集することにより、顧客や社会的な新たな要請に応える体制を整備することが求められる。例えば、共通基盤的研究を分散された研究組織の仮想統合体(バーチャル・ラボ)で実施するなどの従来の協力関係を超えた取り組みが必要になる。

これらの課題は、情報化技術によるツールの導入だけで解決できるものではない。産業全体の課題として、克服すべき点が多い。ただし、近年の瞠目すべき情報技術は、有効活用を図ることで、これらの課題解決を支援する可能性がある。次節では、造船・舶用工業の高度情報化グランドデザインを示し、次々節以降では、課題解決のための基盤強化の方向と、これを実現するための情報化の役割、機能について記述する。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION