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4. 他産業における情報化の動向

 

90年代に入り、クリントン・ゴア政権の情報スーパーハイウエイ構想を引き金として多くの産業が情報化を進めている。本章では、造船・舶用工業の産業構造に類似性がある他産業事例として、国内の建設、航空機産業、および海外の自動車、鉄鋼構造物産業の情報化動向を整理する。また、造船・舶用工業の保守サービスを検討する観点から、米国の航空輸送産業における保守サービス事例を取り上げる。

 

4.1 国内他産業における情報化の動向

 

(1) 建設

1) 情報化の狙い・特徴

バブル経済の終焉とそれに続いた一連の不祥事により、不透明な商習慣の見直しと内外格差の是正に対する社会的な世論が高まるとともに、建設産業を取り巻く環境は下記の通り、厳しい方向へと向かいつつある。

・施策環境 一般競争入札の導入

・市場環境 建設市場の国際化、バブル経済崩壊後の市場低迷、公共投資の縮減

・労働環境 就労人口の減少

また、近年では、地下暴落、株価低迷のあおりを受け、財務体質の悪化が深刻な問題となりつつある。このような状況の中、「情報化」は、以下の課題解決に向けたひとつの手段として認識されている。

・生産性向上(コスト削減、品質向上、工期短縮)

・営業力強化(受注拡大)

情報化支援の対象範囲としては、様々なレベルが考えられるが、概ね以下のような方向性を有する。

・部門内Level 個別業務支援による単体業務の効率化(新規システム導入)

・部門間Level 業務間連携によるロスの低減(標準化、システム連携)

・企業内Level 意志決定、コミュニケーションの迅速化(ネットワーク化)

・企業内Level 知識ベースの共有による技術・営業支援(標準化、DB化)

・企業間Level 企業間連携によるロスの低減(標準化、EDI化、技術情報交換)

このうち、個々の企業の体質改善が急務であることから、企業間の調整を含む業界としてのレベルアップよりも、合理化効果を明示的に享受しやすい企業内部における生産性向上、営業力強化に向けた取り組みが中心である点に特徴がある。企業間においては、施主、施設管理者、設計事務所、施工事業者から多様な資材、設備機器メーカーに至るまで極めて多くの事業者がその生産プロセスに関与することから、EDI、技術情報の交換に向けた取り組みが中心である。

 

 

 

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