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エージェントがユーザーに代わって、情報に対する検索/認証/処理/監視を行うことにより、技量に長けていないユーザーがアプリケーションを使いこなしたり、定型作業の自動化をより素早く柔軟に行うことが可能になる。シップ・アンド・オーシャン財団の高度造船CIMの開発研究(後述)において、設計・製造業務におけるエンジニアの個人あるいは協調作業を支援する知的エージェントの研究開発を計画している。

 

(2) (エンジニアリング)プロセス・モデル(ワークフローモデル)

複数の作業者による協調作業が行われる際に、これらの作業者間で連絡を取合うことが非常に重要である。業務フローのモデル化は様々な形でなされており、有向グラフやオートマトン、会話モデル等によって行われてきた。

 

1) IDEF(Integrated DEFinition Method)

IDEFは米空軍で開発された業務プロセスのシステム分析のための手法で、ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(Business Process ReEngineering)を促進する手段として1970年中頃から欧米で活用されてきた。IDEFにより現状の業務を正しく理解し、共通理解の上で課題と改善策を見つけることが可能になる。IDEFは数多くの手法からなるシリーズであるが、そのうち広く使われているのが、以下の3手法である。

・IDEF0・・・機能モデリング手法

・IDEF1X・・・データモデリング手法 (IDEF1/情報モデリング手法をデータベース設計に適するように拡張)

・IDEF3・・・プロセス記述獲得手法(実務に近い人が業務の実態を表現できる手法)

近年では米KBSI社の"AIO WIN with ABC"、"ProSim"等IDEF支援ツールも充実し、CALS推進の前提手段として活用されている。高度造船CIMの開発研究では、設計者同士のやりとりなど協業を支援するシステムの開発において、プロセスモデルに基づいたワークフロー管理の実装を検討している。

2. 造船・舶用工業の高度情報化動向

造船・舶用工業は、従来から企業内の情報化を推進している。本章では、造船業、舶用工業における情報化の現状と動向を整理した上で、造船ヤードと舶用メーカーとの間の業際における情報化の現状と動向について整理する。

 

2.1 造船業における情報化の現状と動向

(1) 造船各社の情報化の動向

日本造船業が戦後11年後に進水量シェアで世界一になり、その後も高いシェアを維持し世界の造船業をリードしている要因のひとつとして、生産技術を中心とした技術レベルの向上が挙げられる。造船各社の情報化は、生産分野の技術の連鎖を進め、生産性を向上させることに貢献している。

戦後における我が国造船業の技術的な発展は、戦前からの高い技術蓄積に加え、溶接ブロック建造法の導入をきっかけに、自動溶接法などの生産性を高める自動化技術、罫書工程のEPM(電子写真罫書装置)や切断工程におけるNC(数値制御)方式などの精密化技術、およびPERT(作業計画管理技法)や統計的精度管理法による生産管理技術等の生産技術の革新により達成された。これらの技術革新により連続建造による量産メリットの追求が図られ、価格と納期が重要な国際造船市場において高い地位を占めることが可能になった。80年代に入り、情報化やメカトロニクス化などのエレクトロニクス技術の導入により一層の生産性の向上がなされた。現在、造船業各社で進められている生産分野の情報技術活用を図表I.2.1-1に示す。

 

 

 

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