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4. 要約

 

(第1部)情報化の現状

コンピューター価格性能比の向上や情報インフラ整備の進展、および90年代以降の高度情報処理技術の向上により、企業経営の合理化・近代化の世界において従来の情報化の枠を超えた高度な情報技術活用が現実化しつつある。高度情報化の本格的な流れは、クリントン政権発足後のNII(National Information Infrastrucure)構想として始まった。

NIIの基本的な考え方は、情報基盤の整備による?顧客との密着による販売・営業の強化、?グローバルな調達や生産などの最適化、?意志決定の迅速化、?IT(Information Tech-nology)を活かした情報交換による業務全般の効率化が、米国の産業競争力の強化に役立つというものである。NIIは、その後G7各国の合意により世界レベルのGII(Global In-formation Infrastrucure)構想という概念に広がりを見せ、各国の産業情報化政策を加速させている。

これらの取り組みは、現実の経済活動において各産業・企業のビジネスの形態を変えつつあり、厳しい事業環境にある我が国造船・舶用工業においても中長期的に高度情報化技術を活用した事業変革を進めることが重要である。

そこで、情報化技術を活用した我が国造船・舶用工業のあるべき姿について考察を行うための前段階として、高度情報化技術の現状と各国産業の取り組みの現状について整理する。

第1章では、高度情報化を促進する情報技術の現状を把握するために、高度情報化技術を活用したビジネス革新手段であるCALSの要素技術と、米国における産業競争力強化を目的としたNIIIP(National Industrial Information Infrastructure Protocols)プロジェクトなど先端的な情報技術を整理した。

CALS構想は、生産・調達・運用までの製品情報をネットワークで一元管理することで飛躍的な生産性の向上を図ることを目的としたプロジェクトである。CALSの効果は、

?情報の共有による共同作業の効率化、業務プロセスの効率化

?自社の得意技術・中核能力(コアコンピタンス)の蓄積、再利用の促進

?既存情報の再利用の促進

などが挙げられる。我が国でも1995年にCALS技術研究組合(NCALS)が設立され、3年間のCALS実証事業を開始した。同事業は、コンソーシアムの形で自動車、鉄鋼、船舶など11産業で行われている。また、個々の民間プロジェクトでもCALSの手法やツールを利用した情報化の取り組みを行い、生産性を上げている。

 

 

 

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