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4. まとめ

 

我が国の沿岸海域における海洋環境は、川や陸上から種々の汚染物質が海洋へ流れ込むとともに海面利用の拡大等で、年々海洋汚染が拡大している。このため、海洋汚染は海洋生物への影響、特に魚介類への影響が大きく、我々の食生活に大きな影響を与えている。本事業では、この様な状況のもとで、きれいで安全な海を取り戻すことを目的として、我が国の沿岸海域の海洋汚染の現状や、魚介類の生産への影響等を調査するとともに、海洋汚染対策の一つとして欧米で盛んに開発が行われている陸上養殖技術の現状を調査した。また、過密状態にある海面養殖等の一部を陸上に移行して養殖するため、我が国に適した陸上養殖対象魚の選定行い、海洋に用水を流さず魚が生産できる循環式陸上養殖システムの概念設計を行った。

本事業の成果は次のとおりである。

 

(海洋汚染)

1) 我が国の沿岸海域、特に内湾の海洋汚染はかなり深刻な状況である。特に、海水の貧酸素化と富栄養化、浅水域での底質環境の悪化、貝類の生息域である砂浜域の汚染、赤湖による魚貝類の被害等が顕著になってきている。

2) 汚染の原因としては、沿岸域の地形改変等による海水の滞留、陸上からの排水・投棄等による海水への負荷の増大等が考えられる。

3) 現在の内水面養殖や海面養殖は地域、場所等に限界がある上に、自然災害や海洋汚染、寄生虫や魚病等さまざまな障害に晒されている。また、海面役餌型の養殖方式は、残餌等により水質や底質が悪化し、海洋汚染の一因になっている。

 

(漁業の現状)

4) 世界の人口は、1997年6月現在58億5千万人で、今後も増加し、推定では2000年には62億人、2050年には100億人に達する。また、世界の穀物生産量は2000年には22億トン程度にまで増加するが、21世紀半ばに28億トンの限界点に到達すると予想され、世界の人口増により食料事情は逼迫している。

5) 1995年の水産物の全生産量は1億1千2百万トンである。その内、漁獲漁業生産量は9千1百万トンで過去10年間横這いである。今後も世界の漁業生産量は大きな伸びは期待できない。

6) 1995年の水産養殖生産量は2千1百万トンと、ここ10年間で倍増している。今後も増え続け2010年には3,500万トン、2025年には5,200万トンになるとの予測もあり、世界の養殖生産量は急速に伸びている。水産養殖は今後も重要な食料生産手段として期待できる。

7) 我が国の内水面養殖・海面養殖の生産量は、海外からの輸入による魚価の低下や稚魚の高騰、赤潮や魚病によるへい死等により伸び悩んでいる。

 

 

 

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