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3.6.2 選定魚種の特性

ハマチとマダイの一般的な特性や生産動向は3.2.3主要魚種の生産動向の章で既に述べたが、循環式陸上養殖での養成を行うことを視点として、もう少し詳しく見てみる。

イ)ハマチ

種苗 4月頃、1g〜10gの天然モジャコ買付け。人工種苗生産も一部行われてはいるがまだ大量入手は期待できない。モジャコは特に水温変化に弱く、5℃の変化で衰弱または繋死すると言われるので、運送には特に注意が必要である。また、天然のモジャコには魚病を持っているものがあるので、入手時のチェックも必要である。また、モジャコは餌付けが難しいので、できれば漁獲後一週間以上を経過した餌付け完了の稚魚を入手したい。導入当初は、餌付け時の餌と同じ物を与え、少し成長してから餌料会社が販売している配合飼料に切り替える。

1998年2月の神戸市における国際養殖展で、米国のハーバー海洋研究所のDaniel Benetti博士は、天然親ハマチからの産卵・孵化に成功したと発表した。親魚を循環式養殖水槽内で養成・熟成させ、18ヶ月間にわたって週2回同じ周期で計40万個の産卵に成功し、3万尾の稚魚を網生け簀で養成したが、餌の工夫等で生存率を高めていけばハマチ種苗の大量生産は可能であるとのことである。そうなれば稚魚がいつでも入手できるわけで、ハマチの陸上養殖には大きな前進となる。

モジャコ育成 5〜7月にかけて、餌付けが完了した稚魚に対しては、水温を徐々に高めながら、水分の多い餌料を与える。7月を過ぎ、尾叉長が20cm程度になると急速に体長が伸びはじめるので、餌の脂質を増やし、c/p比を高める。

水温 14℃を下回ると摂餌が不活発になる。ハマチは水温によって成長速度に大きな差異が生じる、ということは、陸上で常時20℃から26℃程度に温度管理ができれば、良好な成長を期待できるということでもある。

酸素消費と容存酸素 ハマチは活動量が多く酸素消費量も他の魚種に比べて高いのでDO管理には特に注意を要する。ハマチのDO目安は、正常摂餌5.7mg/リットル以上、3〜5.7mg/リットルでは摂餌不振となるので、通常は6〜7mg/リットルを維持する。

水槽 ハマチは遊泳力が高いので、水槽は大型のものを使う必要がある。養成密度については、網生簀ではむしろ薄飼いが最近の傾向であるが、陸上養殖においては最低5%以上は目指したいところであり、今後の実験が待たれる。

ロ)マダイ

種苗・成長 マダイの人工種苗生産技術は最も発達しているので、種苗入手は容易である。5月から6月頃に10〜50gサイズの種苗を購入し約1年半をかけて養成するのが海面養殖では一般的であるが、陸上養殖の場合、施設の回転を考えながら都度種苗を入手すればよく、施設の能力や資金面でも計画的な取り組みができる点が強みである。1kgサイズでの出荷は養成開始から14ヶ月間程度を目標とする。

水温 水温耐性は比較的強いが、成長速度を考慮すると20℃から24℃を維持するのが好ましい。

酸素消費量と要求量 マダイのDOは4mg/リットル以上が必要である。

色揚げ 餌料にアスタキサンチンを添加するとともに、タンクに対する遮光も考慮する必要がある。

 

 

 

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