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3.6 循環式陸上養殖システムの概念設計

 

前章まで循環式陸上養殖システムに関する理論及び技術の概要について述べてきたが、魚種によってシステムの機能や能力要求に差が出ることが判明した。したがって本章では、養殖対象魚種を絞ってその概念設計をさらに進め、実証実験に繋がる考察を行う。

 

3.6.1 対象魚種の選定

企業として養殖対象魚種の選定を行う際に最も重要なファクターは、採算性があるかどうかであり、その指標として魚の市場価格動向と需給バランスの予想が重要なポイントとなる。しかし、新たなシステムを導入する場合には、同時に周辺の技術等も考慮する必要がある。そこで以下の基準によって各種魚種を評価判定し、選択順位をつけた。評価方法は、まず技術評価と市場性その他の評価に分け、さらに細分した6つの基準についてゼロから4ポイントまでの得点をつけた。ゼロは技術がまったく発展していない、あるいは評価が低いものとし、4ポイントは技術が最も完成し、あるいは市場性等の評価が最も高いと思われるものとした。そして得点の合計が多い魚種から順に並べた。

ア)種苗技術 健康な種苗が安定的に入手できるか、孵化技術は発達しているか。

イ)餌料技術 品質の良い餌の安定供給が可能か。

ウ)育成技術 成魚の育成技術の発展度はどうか、魚病対策はできているか。

エ)市場価格 市場価格と相場安定度はどうか。

オ)市場規模 安定的な需要はあるか、今後の市場の拡張性はどうか。

力)社会性 循環式陸上養殖による生産が伸長した場合の環境や社会への影響度はどうか。

 

例えばクルマエビのように、孵化技術は非常に発達しているが親エビ自体の感染確率が高いので種苗技術は1ポイントしかつけられないケースや、ヒラメやウナギのように循環式養殖ではないが、既に陸上での生産を始めている魚種については社会性は1ポイントとしたケースがある。この他にも視点によっては逆の見方も出てくるものもあろうが、対象魚種を選択するために主観的な判断を含んだ採点方法である事をお断りしておく。

 

以上の結果、ハマチ、アトランティック・サーモン、マダイ、ヒラメの順に高い得点を得たが、本報告では、当初の試みとして現在日本の海面養殖の代表的な魚種であるハマチとマダイの2種を取り上げてシステムを考案していくこととしたい。

 

 

 

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