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3.2.6 魚病対策

海面養殖と陸上養殖を問わず養殖魚に対する種々の病害が発生し、大きな問題となっている。養殖ブリ類の魚病被害は連鎖球菌症による被害が最も多く、ついで類結節症、両者の合併症、ビブリオ症、ノカルジア症の順となっている。

また最近の傾向として、連鎖球菌症と類結節症、連鎖球菌症とノカルジア症、類結節症とビブリオ症との合併症が増加するとともに、従来の海産魚にはみられなかったブリ稚魚のウイルス性腹水症、ヒラメ稚魚の上皮増生症およびビルナウイルス症、ヒラメのラブドウイルス症、トラフグの口白症などのウイルス症の被害が加わり、養殖魚の病気を一層複雑なものとしている。

 

魚病の発生する原因

第一の原因として、養魚の養殖密度が高くなりストレスによる抗病性の低下があげられる。さらに、餌としての冷凍魚の解凍時間の延長で鮮度低下が発生し、これら腐敗・変質した有害餌料の投与で栄養障害や生理障害が先行して発生し魚病が誘発されることがあげられる。更に、養魚自身の排泄物や残餌、冷凍餌料魚の解凍にともなう流出物が、閉鎖的な養殖場の環境を悪化させ、魚の先天的抵抗力や、後天性免疫力を低下させている。又、餌料魚から溶出する魚肉エキスや残餌などによる養殖場の汚染により、病原菌の感受性や生存能が強化されることも原因する。

養魚の感染症や寄生病の成立は、第1に感受性の強い一次感染が多数存在するようになって感染の機会が多くなること、第2に養魚の病原菌に対する感受性が高まることがあげられる。養魚の感受性に影響を与える因子としては、環境の悪化や過密養殖によるストレス、変質腐敗餌料による消化官の障害、ならびに外傷の3因子がある。環境ストレスと消化管の機能障害はビタミン欠乏症などを誘発して粘膜作用の低下をもたらし、魚の先天性抵抗力や後天性免疫力に影響を与えている。また、養魚の取り扱いや、養魚同士の擦れなどによる外傷が、病原菌の侵入経路となる。そのうえ、外傷は浸透圧調節作用に影響する。

魚類のリンパ器官は未分化の為、病原菌が外傷から侵入すると簡単に血管系に入り、血流に乗って短時間のうちに、あらゆる臓器に侵入する。そこで病巣を形成して増殖した大量の病原菌が、再び血流中に送り込まれる。この結果、敗血症の症状を呈し、比較的短い時間で養魚を大量に斃死させる。

循環式養殖の場合、病原菌が発生すると閉鎖系のため感染の速度が速く、病原菌の根絶に困難を伴うので、魚病には細心の注意と対応が必要である。

魚病に対する対応

我が国の養殖の場合、魚病対策は抗生物質の大量投与にたよっているのが現状であり、養殖魚の薬害は大きな問題となっている。抗生物質を使用しない健康に良い魚を提供するするためには、魚病の発生を未然に防ぐワクチン投与以外に有効な対応方法が無い。閉鎖系の陸上養殖の場合、ワクチン投与は必須の条件である

現在、我が国では製薬メーカーを含めて、養殖魚のワクチン開発を行っている会社は皆無であり、既に商品化を実現した外国のメーカーと技術提携するのが最善の方法である。外国での

 

 

 

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