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3.1.2 海域汚染の現状

(1)日本の海域汚染の歴史

わが国の海城は、人口の増大や産業構造の変化につれて、様々な汚染に晒されてきた。

明治から大正にかけては、鉱業排水に由来する重金属元素による水質汚濁が大部分であったが、戦後は、重金属以外に農薬や各種化学物質による複合的な汚染が増加してきた。

これらの化学物質による水質汚濁の状況は、1970年から1972にかけてが最悪であったと考えられるが、その後1971年に環境庁が発足する等、各種規制や基準が強化されるにつれ、改善されてきている。

しかし、1974年の水島での重油流出事故や、1997年の隠岐島沖でのタンカー座礁による重油流出事故等に代表される油による海洋汚染事故は、毎年300件以上も発生しており、さらに、人口増大に伴う生活排水による海域への負荷の増大も加わって、海域の環境基準は過去20年間に大幅に好転したとは言えない状況が続いている。

 

日本の公害と主要な対策

1953年(昭28) 有機水銀による水俣病発生

1957年(昭32) カドミウムによるイタイイタイ病発生

1965年(昭40) 阿賀野川(新潟)で第二水俣病発生

1967年(昭42) 公害対策基本法一健康被害の補償の制定

1968年(昭43) PCBによるカネミ油症発生

1970年(昭45) 静岡県田子の浦や瀬戸内海など各地で水質汚濁が表面化

1972年(昭47) 瀬戸内海で赤潮による大規模な漁業被害。PCB生産中止

1970年(昭45) 水質汚濁防止法、海洋汚染防止法制定

1971年(昭46) 環境庁発足。悪臭防止法施行

1974年(昭49) 水島で大規模重油流出事故発生。国立公害研究所設置。自然保護憲章制定

1975年(昭50) PCBについての環境基準、排水基準決定

1978年(昭53) 化学物質審査規則法制定

1985年(昭60) 湖沼水質保全特別措置法(窒素、リンの排出基準追加)

1989年(平1) 伊勢湾、瀬戸内海、東京湾の近海魚の80%以上がTBT汚染と判明(環境庁調査)

1997年(平9) 島根県隠岐島沖でロシアタンカーナホトカ座礁。重油約6,240キロリットルが流出。

1997年(平9) 東京湾本牧沖でダイヤモンド・グレース号が座礁。原油約1,550キロリットルが流出。

 

(2)日本の水環境の現状

平成8年度版環境庁の環境白書1)は、『我が国の水質汚濁の状況は、有害物質については、前年度に引き続きほぼ環境基準を達成している。しかし、有機汚濁については、なお全体の3割の水域で環境基準が達成されておらぬ』としている。

以下、環境白書の要点を抜粋する。

イ)海・川・湖等の水質汚濁

我が国の水質汚濁の状況は、有害物質については、前年度に引き続きほぼ環境基準を達成

 

 

 

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