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1. 事業の目的

 

我が国には湾や内海等の養殖漁業に適した海域が多いが、北欧のフィヨルド等とは異なり沿岸海域の水深が浅いため、生活排水を初め養殖産業による養殖魚の残餌や排出物が堆積し易く、また海水の対流が少なく新陳代謝が乏しいため、プランクトンの増殖を招き、そのため赤潮による被害等も多く海洋汚染の一因となっている。また、養殖魚の病気の発生を防ぐため餌に混入する抗生物質が海底に蓄積したり、海中に溶出するなどして、海中の微生物等による海の浄化作用を損なう恐れがある。このような海洋汚染を解消し海の浄化を図ることは、海洋環境を保全する上で重要な課題となっている。

本事業は、海の生産力に依存せず陸上で魚が育成できる環境を作り、海洋汚染を招かない養殖用水完全循環式陸上養殖技術について、魚の生態系等の基礎調査を含む総合的陸上養殖技術の調査研究を行い、広く海洋汚染防止に寄与することを目的とする。

 

2. 事業の実施内容

 

2.1 事業の内容

2.1.1 海面養殖の現状調査

我が国の沿岸海域の養殖状況および海洋汚染状況等について、北海道、東北、中部、四国、九州等の現状調査を行った。

 

2.1.2 養殖対象魚種の特性調査

鹹水(塩水)性-淡水性、暖流系-寒流系、回遊系-定着系、植物食性-動物食性などのパラメータから魚種を体系化し、その生態・生育環境(生育史、生育環境、栄養要求(餌)、病気、免疫等)の特性調査を行い、陸上養殖対象魚種を選定した。

 

2.1.3 養殖魚の市場性の調査

世界の水産物の市場性(需要、流通、加工等)の調査を行い、最終食品を想定した生産コスト及び生産規模の策定を行った。

 

2.1.4 養殖技術の調査

対象魚種の酸素要求、個体群の代謝量、養殖に必要な水質基準、水質管理方法、水処理・浄化方法等、国内外の技術調査を行う。また、対象魚種の摂餌生態の調査を行った。

 

2.1.5 陸上養殖システムの概念設計

養殖対象魚種を想定した陸上養殖システムの概念設計を行った。

 

 

 

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