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(3) 船位誘導機能に対する運航員の所見等

内航近代化実証船の実運航における操縦モードの比較の結果、船位誘導モード使用の割合には利用方法を習得した運航員であっても個人差があるとともに、航行海域によっても使用割合に差があることが明らかになった。

乗船調査での操船状況の観察では、オートパイロットモードでの航行時において、避航操船もオートパイロットを用いて行われていた。つまり、他船との間に見合い関係が発生し本船が避航動作をとる場合には、オートパイロットの指示針路を適宜避航のための針路に設定し、オートパイロットによる針路追従によって変針を実現している。避航動作が終了すれば、新たにコースラインに復帰するための針路を与える、あるいは、そのまま原針路を与えて航行を続行している。

運航員のヒアリングによると、ある程度開けた沿岸域であれば他船と出会う機会も少なく、また出会ったとしても避航動作に余裕が持てるので、船位誘導モードでの航行には支障を感じないが、輻輳している(他船と出会う頻度が沿岸域に比べて高い)海域では、船位誘導モードでの避航動作(トラックボールによるWPの移動)よりも、オートパイロットによる避航動作の方が簡便である、とある。

また、(1)船位誘導機能の概要で示したように、11月以前での船位誘導モードではGPSの計測誤差等から針路の変動が存在していた。この状況に対して運航員は、他船(特に反航してくる船舶)による本船の挙動把握に紛らわしさを与えてしまう可能性があるとの指摘もあった。

一方、他船との出会いが少ない沿岸海域では、船位誘導機能はシステムによって位置把握ができているため、かかる作業による負担は軽減するとともに、他の内航船が通常では航行しない海域をとることができるため、見張り・避航動作等に関する負担も軽減できるとの指摘もあった。

 

内航近代化実証船の船位誘導機能は、沿岸域では有効であると言えるが、特に輻輳している海域では、針路誤差ならびに避航動作との関連から使用が控えられる結果となった。制御精度については改善が図られたが、簡便な避航指示方法(インタフェース)は今後の課題として認識することができる。

 

 

 

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