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するかどうかの予測ともからんで極めて困難である。そのためにも信頼できる油の漂流予測システムを整備する必要がある。

我国では既に石連が幾つかの海域でリアルタイムの気象を入れたシミュレーションの汎用プログラムを完成しており、シップ・アンド・オーシャン財団でも油の漂流予測に、油の性状の変化の予測を加えたものを作成しているが、これらの予測に必要な海流や潮流のデータベースを既存資料から整備するだけでなく、巡視船艇等と連携してリアルタイムで海流や潮流データを収集しデータベースを検証しながら、実際に即した的確な予測を行う体制を作るとともに、更に広い海域についてこのようなデータベースと体制の整備を進めることが望まれる。

8. 分散処理剤の使用は、油流出後48時間の間に行わないと効果が減じると言われるが、日本では有害性について、特に水産関係者の抜き難い警戒心があることから、米国あるいはノルウェーでやっているように、事前撒布の承認(同意書)を地域別に取っておき、即刻対応できるようにすることが望ましい。又それに関して、各海域のsensitivity mapを作成しておくことが望ましい。

既に日本財団の補助を受けて日本海難防止協会のプロジェクトが進められているのは時宣を得たものである。

9. 海岸でのclean-upの方法について、利害の立場の異なるグループから別の方法の提案が出る事は、充分予想できる。その海岸では何を優先すべきかを総合評価し、予め同意を得ておくことは、極めて難しいが必要な事である。

10. SEA EMPRESSではコンクリートミキサーが海岸の小石の浄化に役立ったとの事で、日本でもバキュームカーや消防ポンプ、あるいはガット船が高粘度油回収に役立った事が報告されている。これらの事が記録されて今後に役立てられることが望まれる。

11. 回収した油や、油まみれの廃棄物を一時的に収容する施設及びこれらの最終処理の施設を考慮しておかなくてはならない。又これらの回収物が法的には産業廃棄物として取り扱われると言うことだが、英国では油混じりの砂をアスファルトと混合して道路に使用したり、生物分解で浄化して再利用しているように、何等かの方法でゴミの量を減らす事を考える必要がある。

12. 油防除のため、地域の漁船と予め契約を結んでおくのは考慮に値する。

13. 油汚染の被害を受けた海域の生物の回復状況(Mearns Fig.2)や、アラスカの被害海域でサケの回帰数が事故の翌年から数年間に亘って前よりも増えたという報告(Lessard)は希望が持てるものである。

海岸の処理は見た目にきれいになる(例えば高温水、高圧水の洗滌)は、かえって生態系の回復を遅らせ、多少不完全でも常温・常圧水の洗滌とか、手による除去に止め、後は自然浄化又は肥料添加による生物浄化の促進の方が、生態系の回復が早いとの指摘は傾聴すべきで、"How clean is clean"という言葉は噛みしめて味わうべきである。今後、微生物による浄化の積極的な利用法が確立され、市民権を得るよう努力すべきであろう。

 

最後に大変興味のある、又貴重な発表と討論をしていただいたゲストスピーカーの方々と長時間に亘って御傾聴いただいたオブザーバーに御礼を申し上げて、この有意義なセッションを終わります。

 

 

 

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