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うです。展開が間に合わなかったのです。

シー・エンプレス号の場合、フランス海軍がトランスレックの回収装置を使っていますが、かなりの量の油を回収しています。先程西垣さんからトランスレックの試験結果に対して質問がありましたが、それは、フランス海軍がシー・エンプレス号の事故の際に回収的作業をした結果の報告書から得られます。

それから、機械的回収のための機材のテストについてのご質問にもコメントしたいと思います。NOFOの組織は毎年海上流出油の演習を北海で行っていますが、その際常に機械的回収の装置をテストしています。実際にメーカーを呼んで新しい資機材を持って来させ、世界各地からの大勢の見学者の前でテストをします。彼等は実際に機械がうまく作動するかどうかに関して証人になるのです。これは恐らく殆ど全ての機械的回収装置が試される機会になっています。

次に質問です。回収方法として最近特に米国で増加し、認められ始めている方法として現場燃焼という方法があります。これは日本ではナホトカ号の流出の際にはあまり話題になりませんでした。海上保安庁か石油連盟が、あるいはどの期間の方が適当か分かりませんがお伺いしたいのです。日本では大規模な流出の際に現場燃焼という方法はお考えになったことがあるのでしょうか。そうだとしたら、現場燃焼を実行するための承認には、どの様な手続きが必要なのでしょうか。

ルーダール: 多くの実地試験の中で、幾つかの海上用機材のテストをしたということをおっしゃっいましたが、彼が発言したとおり、沢山の海上の機械的回収作業において適切な装置が使われていなかったいうことは事実です。そして、十分に訓練を受けていない人が使ったり、船がその作業には適切でなかったりもしました。したがって、機械装置を過去の実績だけで判断してはいけないと思います。

鈴木: 現場燃焼については、日本財団の補助事業をもって、我々(海上災害防止センター)が数年間にわたり調査研究を進めてまいりました。現場燃焼の処理方法はできあがっております。今回のナホトカ号の事故については、まだ現場燃焼を使用するルールはできておりませんが、試験的にこれをやってみたいという申し入れは致しましたが、沖合での燃焼はできませんでした。海岸から近いところでの燃焼ということになると、付近住民や地方自治体からの反対もあり、現実にはできなかったのです。

工藤: 今回のナホトカ号の事故はかなり外洋で起こった事故です。例えばハワイ沖を航行している船舶により流出が起き、海流の影響によってハワイが汚染されたとします。OPA'90の想定の範囲からも外れた事故になるのではないかと思うのですが、この様な事故が起こったとすると、どの様に対処なさるのでしょうか。

ベニス: 私の理解ではご質問は「油の流出が公海で生じ、我が国の海岸がそれによって強い影響を受けた場合、OPA'90ではどのように対応するのか」ということになると思います。極めて単純に、もしある事故によって実質的に非常に大きな脅威が米国の海岸に及ぼされるということであれば、その事故がどこで生じたものであっても、我々はOPA'90の下で創設された油濁責任者信託基金を使うことができます。我々沿岸警備隊が浄化業者と契約を結び、対応していくことになります。OPA'90のもとで集めた全てのツールを活用することになるでしょう。油濁対応組織のリストも使います。対応品目全てを使用し浄化業者と事故対策に当たることとなります。

今市: ナホトカ号の油を見ていると、原油というのは時間がたつと固まってきます。散らすことばかりお話しいただきましたが、固めることを考えた方はおられないのでしょうか。ある程度固体化して除去しやすくする。そうすると機械的回収の場合に、少なくとも10%や15%は回収のときに助かると思うのです。その様な方法は考えておられないのでしょうか。

レッサード: 実は凝固剤については、ここ3年ぐらい、石油会社が共同で資金を出し合って作った石油環境研究会という組織で研究を進めています。米国の独占禁止法の例外として認められており、環境問題については資金をプールして共同で研究することが許されています。我々はこの組織の傘下で、海上及び陸上で流出した油に凝固剤を適用する研究をしており、その関係の幾つかレポートを出しています。要は凝固剤の資料は沢山あるということです。これらの凝固剤は実際に炭化水素と反応して結合する重合体で、しばしば個体化するので、水から、あるいは土から物理的に回収できるようになります。しかし、一番効果を生むのは油が非常に軽質の時です。例えばディーゼル油やガソリンの流出の場合には非常に速く効き、効率も高くなります。ただ、これは速度過程ですから、油がより濃く、重くなると、より時間がかかります。重質油の場合、例えばナホトカ号の流出油のような場合には、重合体の外側が凝固した大きな分子によって詰まってしまうので、効率が非常に落ちます。要するに、非常に軽質の油の流出の場合には凝固剤は非常に有用だと思います。しかし、重質油の場合にはあまり効果が上がりません。

 

 

 

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