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が高まらないかどうかということをチェックしています。例えば英国の場合には、クウェートの油を使って、クランゴンクランゴンという褐色の小えびをテストに用いて、原油の毒性と分散処理剤を散布して分散した原油の毒性とを比較してテストしています。分散処理剤を使っても毒性が増大しないということになると使用を承認されます。

魚の味が変わることに言及したのは、それが低レベルの影響だからです。誰もが、第一の影響として調べたいのは、毒のせいで魚の資源量が減ることだと私も思います。油の濃度が非常に高まったブレア号の場合でさえ、ヒレのある魚は分散された油から逃げました。ですから、急性の毒性の影響も動く生物にはありませんでした。これはシー・エンプレス号の場合も同じで、分散した油から逃げられる動ける生物に関しては急性の毒性はありませんでした。最も分散油の影響を受けやすい生物は、海底から動かない二枚貝等で、物理的に窒息してしまうか、特に濾過摂食生物では油滴が濾過器官の中に詰まってしまいます。流出場所に非常に近い所では大きな影響がありました。シー・エンプレス号に関しても申しましたが、ブレア号の場合も同じです。どちらの場合も流出が起きた約1km以内の非常に局所的な地域で、二枚貝がかなり影響を受けました。その局所的な地域においては二枚貝の死亡率が高かったのです。しかし、それは非常に局所的で、濃度が希釈され、約10ppm以下になると激しい毒性はなくなりました。これは、最近米国で開かれた様々なワークショップで同意されている閾値になっています。濃度が2時間以上10ppm以下ならば、激しい毒性はないということになっています。

味の問題に戻りますが、濃度が低くても、肉に油が入ると油の味がして、売り出せない魚になってしまいます。しかし、これはどちらかというと環境の問題というよりは商業漁業の問題です。

ご指摘の最後の問題のプランクトンヘの影響ですが、最初に水中に油が流出した地点でl0ppm以上の濃度であった場合、実際にはこういうことはなかなか起こりませんし、シー・エンプレス号でもそのような濃度にはなりませんでしたが、例え分散処理剤を施しても毒性の影響がある可能性があります。プランクトンの数が減るのです。全体的な環境への影響ということを考えますと、油が海岸線に漂着した場合の毒性の影響との比較の問題になります。普通の海ではプランクトンはすぐにコロニーを再生します。私はよく知りませんので、ミアーンズさんがより詳しく説明して下さるかと思いますが、どの様な濃度の分散油でも、外海のプランクトンの数に大きな影響を及ぼす、という研究はないのではないかと思います。

ミアーンズ: 米国では数年前、分散処理剤を使うべきかどうかということを考える場合に、分散処理剤を使わなければ水の中に油がない状態になるのかという観点から考えたことがあります。我々が扱っている燃料油、油は必ず水中に存在しています。海洋生物学的な観点から見た場合、きれいな水の中に油が流出するのではなく、既に油が入っている水の中に油が流出するのです。問題は「どのくらい多いと過剰なのか」ということです。水の中に油が全くないと想定して始めるというのは間違っています。

第二の点は、英国の油流出から多くを学び、カナダから少し、そして米国からは汚染された動物からどのくらい速く油がなくなるかということを学んできたことです。「塩抜き」のようなものです。殆どの魚や甲殻類から油分がなくなる過程は非常に早く、半減期が多くても1週間か2週間です。その生物がきれいな水に入れば、急速に油臭さはなくなります。

もう一つ私が長い間非常に関心を持っていた点があって、前にルネルさんや彼の同僚達とちょっと話し合ったことがあったと思います。カナダでは25年前に興味深い研究が行われました。科学者達がプランクトン、撓脚類、小動物をサンプリングしましたが、流出時でも生きていて、しかも7,000ppmのC重油が体内にあったのです。つまり、分散している油滴をむしろ自分達の食べ物として取り込み、元気に生きて糞をしていたのです。我々は更にこの方面の研究をする必要があると思います。それは、「海洋中で油がどうなって行

 

 

 

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