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討 論

レッサード: 大量の油で汚染された海岸の浄化については現段階でどんな方法を勧めますか。ご研究の成果ではどのような方法に行きつきますか。

ミアーンズ: 真空吸引、手作業による拾い上げ、いろいろな吸着剤の使用等の多くの例を観察してきました。我々はこれら全てを今日持っている訳ではありません。洗浄もです。問題は、「どの程度きれいなら十分にきれいだとするのか」ということです。必ずしも全ての油を取り除く必要はないと思います。液状の油一常温常圧の大気の下で流動性のある油一を除去し、残りを自然の作用に任せてしまう方が資金を節約することができ、また、多くの海洋生物も保護して手作業の拾い上げと合わせて、海岸線を再び回復の状態に戻せると思います。

エクソン・バルディーズ号事故の場合、作業方針の決定が下されたときに私は居りませんでしたが、もし私が参加していたならば真空吸引をもっと勧めたでしょう。

デイヴィス: 地域の人々は実際、全部の岩を個々に洗浄するよう我々に働きかけてきました。極端なことをする状況にあったのです。その時点では我々がしたことは妥協案でした。しかし、あなた方のやり方は有用だと思います。

ミアーンズ: ありがとうございます。もう一度強調したいのですが、「どの程度きれいならば、十分にきれいだとするのか」は考慮に値する問題だと思います。

デイヴィス: シー・エンプレス号の場合、岩場や玉石が油で汚染されましたが、回収はかなりうまく進んでいるように見えました。というのは岩の上に緑の海草が急増しだからですが、それは明らかに自然の状況ではありませんでした。カサガイの様な自然発生する草食動物がゆっくりと回復したのです。その様なことで分かるのでしょうか。

ミアーンズ: はい、そうです。エクソン・バルディーズ号の場合、また、トリー・キャニオン号での教訓もありましたが、本当に回復するのには非常に時間がかかります。というのも、トリー・キャニオン号の場合には化学剤が使われたので、海草を食する草食動物が死にました。極めて高い死亡率でした。シー・エンプレス号の場合にはもっと短期間で緑の藻類が急に現れました。分散処理剤を使い過ぎない限りは、草食動物はすぐに戻ってくるでしょう。

オブザーバー(R.D.デイト、エクソン社): 私から一つコメントがあります。生物学者や科学者にとって、我々が今日ここで学んでいること、過去5年間に学んだ油濁のこと、更にエクソン・バルディーズ号から学んだ7年間、を伝えて行くことは重要な課題です。我々は自然や環境がこういった事故の被害から回復する能力の意味するものを的確に学ぶ必要があります。こういったものを効果的に広く世間に伝えない限り、いつも政治的、社会的圧力がかかり、それに対して過剰反応をするようなことになってしまいます。我々にとって最大の課題はそういったことや、ルネルさんの研究のようにシー・エンプレス号の事故から学んでいること、早くから多くの科学的なデーターが得られていること等を世間に示すことです。それがこれらの事故に対処する際の我々の主張を助けることになるのです。

ミアーンズ: 私も同感です。

 

 

 

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