日本財団 図書館


1972年にノルウェー汚濁管理局(SFT)が設置されてから、ノルウェーは大規模な油流出事故をほんの僅かしか経験していない。エクソン・バルディーズ号やシー・エンプレス号のような大規模のものはない。もちろん1970年代後半に発生した北海のブラボ号の暴噴事故は経験したが、この場合でも海岸線に対して大きな影響は発生しなかった。しかし、この事故によってノルウェーは、比較的総合性の高い油流出事故対応システムを築き上げる機会を持つことができた。

これまで問題になった流出事故の殆ど全ては、燃料重油の流出であった。ノルウェーの海岸沿いには非常に多くの大型バルク・キャリアーが航行しているが、その多くは極めて低い水準にある。多くの場合、機関の故障によって船舶は制御を失い、その結果漂流、座礁して大量の燃料重油を流出させることとなる。事故の多くは、冬季の悪天候時に海岸に近いところで発生する。その結果、流出油の大部分が海岸線を直撃することになる。ご存じの通り、燃料重油は処理が極めて困難な油である。

1992年1月12日に鉱石140,000tを積んだバルク・キャリアー”アリサン号”がノルウェー西岸のルンドの北西で座礁した。合計約150tの燃料重油が流出した。難破位置の関係から流出油が海岸に達するのは避けられなかった。気象条件は極めて悪かったが、座礁の8日後にはSFTとノルウェー海運局の協力のもとに520tの油を抜き取ることに成功した。ルンドはノルウェーの最も重要な鳥類保護区の一つであり、200,000番以上の鳥がここで巣作りをしている。ここには221の異なる種が棲息し、その幾つかは絶滅の危機に瀕している。90tの油は陸上と海上において回収されたが、30km以上にわたる海岸線が油に汚染され、延べ4,560人日の洗浄作業によって汚損された。3,000羽の海鳥が死に、烏の損害は190kmにわたり記録された。油の流出が巣作りの時期の前であったので、海鳥の死は比較的少なかった。

油流出の結果について調査が実施された。海岸の浄化作業記録から経験に基づいたデータが得られ、これは将来の行動、特に脆弱性の程度によって地区を分散することに関連して適用することができる。

作業期間は1992年1月から10月までであった。この作業に要した全経費は概算3,450万クローネ(500万米ドル)であった。

西海岸のこの地域の表面に出ない損害は莫大なもので、中央管轄当局、この場合にはSFTが動員される程であった。

これは政府がこの地域の保護及び全体の浄化作業のための事前行動計画の策定及び実施に対し全責任を負うことを意味する。

汚染管理法に従い、ノルウェーの国家緊急防災システムには三本の柱がある。

民間の対応準備

自治体の対応準備

政府の対応準備

油及び化学的汚染に対する民間の対応準備に最も重要な貢献を果たしているのは、精油所、石油化学及び化学工場並びに沖合石油産業である。沖合石油産業に対してSFTは三段階の特殊基準を定めている。即ち、石油生産設備における油防除作業、重大汚染(暴噴)の場合に対する一般的対応準備、及び陸地近くでの掘削作業に対する特別な対応準備である。約26,000mのオイルフェンスと65基の油回収装置が民間企業の所有する船舶及び補給基地に備えられている。産業による汚染の場合には、ノルウェーの汚濁管理局は汚染者自身が事前に承認された緊急防災計画に従って対応していることを監視し、確認する。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION