日本財団 図書館


米国における最近の重大油汚染事故は、1989年のエクソン・バルディーズ号の油流出事故以来、米国の海洋油汚染対応組織がいかに改善されてきたかを明確に実証するものである。

以前は、対応者、責任当事者及び影響を受ける海運業界の間には明らかに団結と組織体制が欠如しており、対応現場には若干分裂的な雰囲気があるように思われた。

エクソン・バルディーズ号の事故の教訓から十分学んだ我々は、機能的で、柔軟性もあり、非常に有効なシステムとして実証された油汚染対応手法を確立することができた。

連邦政府の規制上の見地から、OPA90として知られる1990年米国油濁法は、立法活動にはずみをつけ、油汚染対応に関して、財政上の責務、損害/損失の補償、船舶及び施設の運用要件、訓練要件、資機材の備蓄から、汚染対応の計画策定及び準備態勢に至るまで、多くの議案が提出された。

米国モデルの油流出事故対応の成功の基礎は、汚染者又は有責の当事者が汚染浄化の責任を負うという考えを前提とすることにある。その対応は連邦政府の指示に基づいて行われる。更に、連邦政府代表者(海上事故に対しては米国沿岸警備隊、大部分の内陸部の油流出事故に対しては米国環境保護局)が、汚染浄化の完全な遂行を確認する責任を負っているとは言え、対応の成果を上げるためには利害関係者を包含することが極めて重要である。これらの利害関係者には、州及び地方自治体政府代表、自然保護管理者、歴史遺産保存の代表者及び環境関係者等を含むが、これらに限定されるものではない。これらの関係者を対応計画の策定及びその実施に参加させることによってエクソン・バルディーズ号の事故以前よりも有効で能率的な対応を実現することができる。

上記の利害関係者と汚染事故により影響を受ける可能性のある全ての人々との間の関係は、0PA90によって制定されて、全てを包括する米国の国家緊急防災計画(NCP)により制約を受けることとなり、これによって現行の対応作業に対し法的効力が与えられる。我々の計画は更に、国家緊急防災計画、地域緊急防災計画に、最終的には地区緊急防災計画に展開しあらゆるレベルの官民に及んでいる。経験上、地域又は地区の緊急防災計画が最も重要であることが明確に認識された。環境影響度解析に基づいて浄化作業の優先度が事前に確認されるのはこれらの計画においてである。更に、状況緊急度又は規模の拡大に応じて、地域内で入手可能な対応要員資機材及び他の地域からの要員資機材の大量回送を確認するのもこれらの計画である。対応組織を以下に示すが、これには全ての地区の代表者、連絡先、対応作業における地位/任務が記載されている。

この計画は地区委員会により作成されるものであり、委員会においては地区の利害関係者が、汚染事故の起こった場合地区における最も重要な問題は何かということについて関心事項を検討し合意を図る。環境は常に最も重要な関心事であるが、影響を受けた地域社会の繁栄にとって重大な、例えば、経済的影響等も又非常に重要である。地区の漁民、海運関係者、レクリエーション企業、科学関係者及びその他の海事地域社会の構成員が、地域の緊急防災計画の作成に参加して、対応の優先度について主張する機会が与えられる。計画作業における一つの重要な要件は単純なもので、それは単に最終的に同意に達しなければならないということである。教訓から学習する間中絶えず考え方の絆としたことは、汚染事故により影響を受ける全ての人々と綿密な計画を作成し、協力体制を確立しネットワークを構築することが、実際の対応作業中の異論を排除し、エクソン・バルディーズ号の苦痛に満ちた経験から得たものを改善するのに大いに役立つであろうということである。

地区の緊急防災計画の作成過程は、その過程において政府機関の間の合意を醸成するものであるが、何ヶ月もにわたる計画作成作業を円滑に遂行するための重要な要素は、一人の担当者を指名することである。この担

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION