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はじめに

 

トリー・キャニオン号、エクソン・バルディーズ号など多くのタンカー事故の教訓の上に、海洋汚染防止のための国際間の取決めや協力が図られてきた。

原油のほぼ全量を海外に依存する我が国は、タンカーの主要造船国でもあり、かつ、なお多くの美しい海岸線を残す島国であることから、船舶による海洋汚染に対しては、とりわけ多くの関心と深い注意を払ってきたところである。

しかるに、本年初頭に発生したナホトカ号海難は、本州日本海側のほぼ全県に及ぶ曾てない広域的な沿岸汚染災害をもたらした。

今般の事故が、我々にどのような課題を提起しているのか、現場で防除対応を指揮した立場から、事故概要の報告の後に考えてみたい。

 

1.海難・油汚染と対応の概要

(1) ナホトカ号の概要

ナホトカ号の要目を〔図1〕に示す。

(2) 海難と油防除の経過

全体の経過を概括して示すと〔図2〕のようになる。以下にその詳細を順を追って述べる。

? 海難の発生と初動対応

海難の概要は〔図3〕に示すとおりであり、上海からペトロパブロフスクに向けての航海の途上の事故であった。〔図4〕

1月2日 ・ 0251 ナホトカ号(N号)からの遭難信号受信。直ちに付近行動中の巡視船2隻に救助を指示。順次巡視船4隻、航空機2機を追加投入。
・ 0820 船尾部沈没。
・ 1000頃 漂流中の船首部を確認。
・ 1300頃 船長を除く乗組員31名を全員救助
〈気象・海象:NW20m/s、波浪6m、うねり4m以上〉
3日 ・ 地方自治体に情報提供を開始。
・ 推定流出量の把握〔図5〕
4日 ・ 「八管区N号海難・ 流出油災害対策本部」設置。
5日 ・ 船首部曳航を試みるが荒天により中止。
・ 巡視船による油処理剤の散布を開始。
・ 海上災害防止センターが船主から油防除業務を受託。
〈気象・海象:NW8m/s、波浪1m、うねり3m〉
6日 ・ 船首部曳航を試みるが荒天により奏効せず。
・ 海上自衛隊に災害派遣要請。
・ 関係省庁連絡会議(於:東京、18省庁)
〈気象・海象:WNW30m/s、波浪6m、うねり4m以上〉
7日 ・ 船首部の沿岸への漂着防止のため、巡視船2隻により索を展張するが、荒天により切断。
・ 1430 船首部が福井県三国町に漂着。同町に油漂着。
〈気象・海象:NW15m/s、波浪6m、うねり6m以上〉
8日 ・ 隣接の石川県に浮流油漂着。

 

 

 

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