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3. セッション2「日本の高速道路整備」

一橋大学 商学部 根本敏則教授

 

最初に、配布してある参考資料の公共投資プロジェクトの評価方法について、若干復習します。重要な概念、用語ですから復習しておきます。公共投資プロジェクトの評価ですが、技術評価、制度評価、経済評価、財務評価という4つの評価で可能です。技術評価は、そのプロジェクトが技術的に可能かどうかを検討することで、土木技術が非常に高度化して、現在では技術的に不可能なプロジェクトは非常に少なくなっています。制度評価は、そのプロジェクトを整備する制度、法律的な裏づけがあるのか、それから組織があるのかを検討します。

経済評価、財務評価、これが実際のプロジェクトの有効性を評価する尺度になりますが、若干、意味、内容が異なっています。財務評価の場合は表-1に示すように市場の価格を用いた評価です。ある組織が想定され、その組織に入ってくる収入、道路をつくる組織ですと、有料道路の料金というのはこの売り上げに当たります。そういう収入や補助金という形で政府から収入が入ってくるかもしれません。そういう実際のお金の流れを考えたときに、収支が合い、事業として成り立つことを検討するのが財務評価に当たります。

それに対して経済評価は、表-2に示すように経済学的に見て正しい価格、すなわち機会費用の考え方です。そういうものを用いて評価するということが大切です。例えば、税金が入っていたら価格は高くなりますし、補助金が入っていたら価格は低くなります。そういう効果を除くことですが、典型的には、遊んでいる土地、失業者が多い場合は、そういう値段は、本来は安い値段をつけて評価されなければいけない。しかし、実際には、最低賃金制度等の政策がありますから、実際の価格はその本来の値段と乖離してしまうということがあり、その辺を調整しましょうというのがこの考え方です。

他の一つの大きな違いは、経済評価は社会全体の利益、社会全体の費用というものを考えなければいけないことです。道路をつくる事業体があったとしても、そこが社会から得る利益をすべて回収できるとは限りません。それ以外の人々にも利益は及びますし、費用というのも、その事業体が建設する費用だけではなくて、それ以外の環境に対する公害問題など、周辺の人たちに等が及ぶというのも費用に考えて入れようということです。

以上申し上げたこの4つの評価すべてをクリアしなければ、すべてのテストに合格しなければ、公共投資は実施できないことになります。

言葉として少し説明しておきますが、経済評価の場合は、費用と便益を比べて、その比率をとる方法、引き算をして純現在価値を出す方法、その他がありますが、日本

 

 

 

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