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まえがき

 

ヴィエトナムは、社会主義体制の下で、市場経済システムを導入し経済に活力を与えようとするドイモイ政策を1986年に導入し、その後急速に経済成長を遂げつつある。1990年代に入ると、市場経済導入の効果、海外からの援助及び直接投資の増加等により、ヴィエトナム政府は人と物の交流を支える運輸インフラを整備すべく、国土の均衡ある発展を目指して、社会・経済インフラ整備を効率良く実施するための公共投資計画の策定を開始した。しかし、多くのプロジェクトは、運輸インフラの整備、維持・管理、運営に関する技術、ノウハウの蓄積が不十分なうえに、資金の調達方法、費用負担、官民の役割分担、官民両セクターに亘る人材の育成等について的確な考えが示されないままに進められているのが実情である。

運輸インフラは、当該国のみならず我が国を含めた多国間の人と物との交流ネットワークを構築するものであるところ、我が国はこれら諸国と類似の自然環境を有し、また、運輸インフラの整備と運営に豊富な経験を有する先進国である。我が国としては東アジアの一員として、専門家の派遣や研修員の受け入れといった技術協力を通じて、ヴィエトナムを含む東アジア諸国の運輸インフラ整備について正確な情報と将来に対する展望を与え、かつ、関係者との議論に参加する機会を提供し、もって東アジア諸国との対話を促進してゆくことが責務となっている。

このような背景から、当協会は運輸省のご指導の下、日本財団(財団法人日本船舶振興会)から多大のご支援を頂き、ヴィエトナム国ハノイ市及びホーチミン市において、広く関係官庁の責任者、担当者を対象とした「運輸インフラ整備セミナー」を開催することとした。このセミナーは同国運輸省次官を始めとする運輸省の関係者や関係省庁の担当官、関係国営企業の責任者のみならず、在ヴィエトナムの日本人関係者にも参加して頂き、運輸分野の各セクターにわたる総合的な運輸インフラ整備プロジェクトの策定と実施に関して、ハード及びソフト両面の課題について、我が国の専門家が我が国の経験を踏まえ、当該開発途上国の関係者に対し人材育成及び人のネットワークの構築を図り、以て運輸インフラ整備を促進することを目的としている。当協会としては、このようなセミナーを契機として、ヴィエトナム国の運輸インフラの整備に携わる関係者と、新たな協力関係が構築される端緒となることを強く期待するものである。

本セミナーを開催するにあたっては、運輸省、在ヴィエトナム日本大使館からも多大のご協力を頂いた。ここに、特に感謝の意を表する次第である。この報告書はヴィエトナムの運輸インフラ整備に関心のある多くの関係者の参考になることを期待してとりまとめたものである。

社団法人 海外運輸協力協会

会 長  竹内 良夫

 

 

 

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