研究項目:航空機乗員の血圧変動に関する研究
―運動負荷による血圧変動と臓器障害―
東京慈恵会医科大学内科学講座第2
酒井 紀
橋本隆男
徳留悟朗
家田慶彦
鳥居 晃
内浦玉堂
要旨
航空機の乗務員において年齢とともに増加傾向を示す高血圧症は重大な問題となっている。近年、高血圧の治療法としての運動療法の有用性が見直されており、我が国でも1996年4月より高血圧患者に対する運動療法処方が保健適応となった。軽症高血圧患者では運動療法により降圧することが良く知られているが、すべての症例で同じメニューの運動療法の適応となるかどうかについては未だ明らかではなく検討の余地が残されている。一方本態性高血圧症患者において微量アルブミン尿は高血圧性心血管系合併症の予知因子となり得る可能性が示唆されている。そこで今回の研究では、トレッドミル運動負荷時(TMET)の尿中微量アルブミン動態を観察し、その臨床的な意義について検討し、次の結果を得た。
正常血圧者(NT群)と顕性蛋白尿を有さない本態性高血圧者(HT群)にTMET負荷を行い、前後の血圧の変動・尿中微量アルブミン(mAlb)動態などを測定し、心エコー所見などとの関連性について比較検討した。
1) 運動負荷前後の尿中mAlbの動態について検討した。尿中mAl選礎値(pre-mAlb)はHT群とNT群で差を認めなかったが、尿中mAlb増加量(△mAlb)はHT群で有意に増加した。