操縦室内の音声聴取特性とその改善対策
産業医科大学
牧嶋和見
吉田雅文
山岸豪敏
清水 隆
要旨
航空機の操縦室内は、機外からの騒音に対する可能な範囲での防音対策が施されているとはいえ騒音環境であり、交信の公用語として英語が使用されている。このような騒音環境下における語音聴取能には、正常聴力者においても個人差が大きく、難聴者においてはその難聴の程度と必ずしも相関しない。本研究では、航空機乗員等の職務を遂行する作業従事者間で、どのように英語の語音の聴取が行われているかという点に着目し、基礎研究として正常聴力の日本人に対し日本語及び英語の語音聴力検査を行った。検査の対象は、19歳から36歳までの正常聴力者10名20耳で、大学在学中の学生や大学卒業程度の英語学習経験を有し、英会話等で英語学習を継続する者や海外滞在経験のある者を選出した。検査諸表には、日本語として67-S語表を、英語としてCentral lnstitute for the Deaf(C.I.D)AuditoryTest W-1 list及びW-2 1lstを用いた。
英語の語音聴力検査の結果について、平均純音聴力レベルや日本語の語音聴力検査の結果と比較した。平均純音聴力レベルと日本語の語音聴取域値はほぼ一致したが、英語の語音聴取域値は日本語のそれと比べ有意に高い値を示した。また、日本語では全例において100%の語音弁別能が得られたのに対し、英語では平均で100%の語音弁別能は得られず、個人によるばらつきが大きく見られた。さらに英語の語音聴取特性についての解析を行うと、子音のうち鼻音や破裂音の音素は正答率が低く、無声子音は有