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【ゲスト寄稿】

エコノミストからの期待

香西 泰(社団法人日本経済研究センター会長)

Yutaka Kousai

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私はFOURUM Emi Bridgeに今回初めて参加した。

私が参加する会合と言えば、大抵は同業のエコノミストが相手で、その他では社会科学者、ジャーナリスト、財界人、経済官僚といったところが出席者である。それだけにこの会議では、普段は味わえない雰囲気を味わうことが出来た。特にボランティアや市民運動の活動家といった方々の発言を新鮮な気持ちで聞くことが出来た。

私のように経済学を勉強してきて、しかも市場経済を尊重する立場を選んだ人間は、こういう場では概して肩身が狭い。「経済開発が生活・文化を破壊し、バブルが人心を荒廃させた。その責任をとれ」、と叱られることが多い。その通りの面もある。だからといって市場経済を否定してもうまくはいかないのだが、当方のそういった発言はなかなか浸透しない。同業者のうち「生活優先」や「経済学の終わり」といった美しい言葉を吐いて、経済学の知識を利用し、格好よく市場経済批判の先頭に立つ立場の人を、ついつい羨ましく眺めてしまうことになる。

しかし今回の会議で感じたことは、ボランティア、市民運動家と言われる人たちの「ゆとり」である。ただやみくもに市場や権力を批判するのではなく、建設的な提案をすることで市場や権力を改造していこう、必要に応じて市場でも権力でも利用してやろうという態度が感じられた。その「したたかさ」が私には特に印象的であった。市場も権力もある種の悪魔性を潜めており、「気をつけろ、悪魔は齢をとっている」という注意は忘れられてはならない。しかし市民運動家の人たちのゆとりや自信は、ボランティア活動の成熟を意味するものでもありそう

 

 

 

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