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1.5.9.1 放射性輸送物の技術基準

 

放射性輸送物は、収納されている放射能量又は放射能濃度により、L型輸送物、A型輸送物、B型輸送物(BM型輸送物、BU型輸送物)又はIP型輸送物(IP-1型輸送物、IP-2型輸送物、IP-3型輸送物)に分けられ、それぞれの有する危険性に応じて放射性輸送物としての技術基準が定められている。さらに、ウラン、プルトニウム等のように核分裂を起こす可能性のある物質を一定量以上収納したものを運送する場合には、輸送中に核分裂を起こさないようにするための核分裂性輸送物としての技術基準も適用される。また、特定の核燃料物質が収納されている放射性輸送物に対しては、盗取の防止等核物質防護対策が要求される。なお、危規則第91条の9第1項の規定により、B型輸送物、核分裂性輸送物又は特に高い核物質防護対策が要求される放射性輸送物については、船積み前に、当該輸送物が危規則の基準に適合していることについて、運輸大臣又は地方運輸局長による放射性輸送物の基準適合性の確認を受けなければならない。

 

1.5.9.2 放射性輸送物の運送方法に関する基準

 

積載場所、積載方法、積載量、他の危険物との混載、船員の放射線被曝量等について基準が定められている。なお、L型輸送物以外の放射性輸送物を運送する場合は、危規則第129条第1項第4号により、船積地を管轄する地方運輸局長、地方海運支局長又は認定法人((社)日本海事検定協会)による積付検査を受ける必要がある。さらに、B型輸送物、一定量以上の核分裂性輸送物、特に高い核物質防護対策を必要とする放射性輸送物又は一定量以上の放射性物質を運送する場合は、危規則第91条の15第1項により、当該放射性輸送物の運送計画書について、運輸大臣の確認を受けるよう、義務づけられている。

 

1.5.9.3 放射性輸送物の運送の届出

 

危規則第91条の21第1項では、B型輸送物、核分裂性輸送物、高い核物質防護対策を必要とする放射性輸送物を運送する場合は、上記1.5.9.1及び1.5.9.2に加え、災害を防止して公共の安全を図るため、運送日時、経路、見張り人の配置等に関する運送届を海上保安部長に提出するよう、義務づけられている。

 

1.6 その他

 

以上が、危険物を船舶によって運送する場合における規制の全容である。この他危規則では、船舶内での危険物の貯蔵に関して火薬類の場合と火薬類以外の危険物の場合について、その容器、包装及び標札等の基準並びに貯蔵船の構造、設備要件及びけい留場所についてそれぞれ規定事項を設けている。また、危規則において「危険物」と定義される物質であっても、船舶の航行又は人命の安全を保持する目的のために、船舶において使用される危険物については「常用危険物」として取り扱われ、その容器、包装及び積載方法については告示別表第17に定めるところによる旨規定されており、通常の「危険物」と比べて、その取扱いにおいて合理的に整理区別された内容となっている。

 

1.7 まとめ

 

危険物の海上運送等における安全の確保は、本章の冒頭でも触れたように、船舶安全法を上位法令とし、危険物等の運送及び貯蔵に関する事項、その他船舶の航行上の危険防止に関し必要な規定を定め、必要な罰則を設けた省令が、危規則であり、一省令としては他に例を見ない膨大な本文と関連告示による規定内容を擁している。このことからもわかるように、本章においては、危険物を海上運送する場合における危規則上の全般的な概要を述べたにすぎず、船舶所有者の義務規定や放射性輸送物作成者等の関連規定についてはほとんど割愛している。また、荷送人や船長の、本章では尽くせなかった義務規定や危険物の分類ごとの詳細な規定についても、個々のケースにより安全確保の観点から重要な内容が漏れていることと思われるので、本稿を、危規則を理解する上でのイメージ作りとして活用し、危険物の海上運送等の実際にあたっては、危規則の各条項及び告示の詳細基準を遵守することを願う。

また、危険物運送に関しては、危険物コンテナに対するコンテナインスペクションプログラムが欧米により行われているほか、IMOにおいても勧告であるIMDGコードを2000年を目途に強制化することが検討されており、国際的にも安全基準に適合した危険物運送の実施が強く要請されている。この点からも、IMDGコードにほぼ全面的に準拠した危規則の遵守を願うものである。

 

 

 

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