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った伯父さんの心に、充分にこたえてはいなかったのかもしれない。けれど、私はやはりここでも伯父さんに学ばせていただいたのだ。人の体に手を加えるということが、その人の人格に対して、どんなに申し訳ないことであるのかということ、そしてそうする以上は、それがどれほど重い責任を伴うものか、ということを。このことを忘れまい、と思う。そして、伯父さんのお顔を、お会いした日に考えたお孫さんと散歩される姿を忘れまいと、今はそう感じている。そしてまた、旦那さまを、お父さまを、お祖父さまを、私達のために、私達に預けて下さった御家族にも、本当に感謝したい。ありがとうございました。

 

解剖学実習を終えて

 

服部 雄一郎

 

今回の人体解剖学実習は、わずか三カ月足らずという非常に短い期間ではあったが、僕自身のこれからの人生や、自分の生と死に対する考え方にかなりの影響を与えてくれたと思う。

実習が始まる前は、佐藤亨教授がおっしゃっていたように、「無言の教授」として赴任されたご遺体に対して礼を失することの無いように、感謝と敬意を持って丁寧に取り扱う、ということは十分に心得ていたが、実際に「無言の教授」を目の前にして、ご自分の

 

 

 

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