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て、私に進むべき方向を示してくれました。私はその師の意思を無駄にする事なく進んでいこうと思いました。何年か後、私が医師となった時に、私の医学の師とは、大学で学問を教えて下さった先生方や教科書ばかりではなく、献体して下さった心の師がいる事を忘れず、日々努力して行きたいと思います。本当に有り難うございました。

 

解剖学実習を終えて

 

森田 美琴

 

二年生になると解剖学の授業がスタートし、講義や教科書、アトラス等から知識を得ました。しかし、先生の話や図譜からでは全てを理解し、イメージするには困難でありました。

いよいよ人体解剖の実習がはじまるという時、私達にとって大変よい経験になると、先輩方の話を聞いたりしてわかってはいましたが、不安と緊張、複雑な気持ちでいっぱいでした。一礼をして実習室に入ると、そこには十数体の御遺体が並べられており、その光景に圧倒され、先生方もいつもとは違った面持ちで緊迫した空気を感じました。これから御世話になる御遺体に対面した時には本当にこんな私が一人の人間を解剖してもいいのだろうかと思い、かつては生きて、笑ったり泣いたりしてきたのだろうと想像するとメスを入れる事に躊躇した事もありました。けれども、医学の進歩や医師を育てるために献体な

 

 

 

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