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「私と献体」

佐藤玲子

私は今迄は献体についての知識は、医学の進歩のためと漠然としたものでした。

今回私は解剖感想文を読ませて頂き本当に良かったと思います。学生の皆様がいかに一生懸命にそして真剣に取り組み学んでいるかが良く理解する事ができました。

人はいつ死を迎えるかわからない。私は小さい頃から病気ばかりして、何度も医師に見放され、その度に親に悲しい思いをさせてきました。十八才の頃には私の形見分けまでしてしまいました。その後、盲腸炎を麻酔なしで手術しその時は「体内の奇形」と言われ、この様な体を解剖の時出来るものならば一番見たいのは私です。

人それぞれで六十才を過ぎて初めて医師に出会い又、それが医師とのかかわりが最後という人もおりました。

生後三ケ月の可愛いさかり幼くして不幸にも命をなくする場合、親の嘆き悲しみは計り知れません。まして死因もわからず病名すらなく、医師も死因を知りたく解剖させてほしいと遺族に話ししましたがあまりにも幼なすぎますので、当然親は拒否しました。もし、私が親でしたら同じ返事をした事と思います。親は幼子の死を信じたくないのです。親は我身に変えてでも子を助けたいと思ったのでしょう。その時の親は人目も憚からず気が狂った様に嘆き悲しみました。

あれから四十年近く過ぎ、医学も日々進歩していることでしょう。我は自分の子、孫、それに続く限りない子孫にこの様な悲しい思いはさせたくないのです。

その為にも将来医師になられる医学生の皆様に期待し不治の病を一つでも無くして欲しいとお願いし、この体を役立ててほしいと思い献体登録させて頂きました。

 

 

 

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