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第3節 カスタマイズ部分についての契約の在り方

 

アプリケーション・パッケージのカスタマイズ部分については地方公共団体とパッケージベンダーとの間でそれぞれ次の権利が必要となる。

地方公共団体としては開発・サポートの現場のレベルで必要なのは「開発されたシステムを使用する権利(使用権)と、自由に改変する権利(著作権法上は『翻訳権,翻案権』)」である。著作権がいずれに属するかとは別に、使用権,翻訳権,翻案権は地方公共団体に帰属させる必要がある。

パッケージベンダーとしては、自ら開発したアプリケーション・パッケージについてはもちろん、カスタマイズした部分についても、他の地方公共団体において同種のカスタマイズ案件が出てきた場合には、既に得たノウハウやプログラムの一部を適用できることが望ましい。したがって、たとえ著作権を地方公共団体に譲渡する場合でも、ノウハウの利用やコードの複製・翻案を妨げない旨の契約が必要となろう。

以上の内容を反映して、アプリケーション・パッケージを利用したシステム開発における委託契約の権利関係の条文の例を表4-1に示す。

 

表4-1 アプリケーション・パッケージを利用したシステム開発委託契約の権利関係の条文の例7)

 

第○条

?@本件プログラムに関する権利(著作権法第21条から第28条に定めるすべての権利を含む。)及び成果物の所有権は、甲(地方公共団体)より乙(受託者)に委託料が完済された時、乙から甲に移転する。但し、本件プログラム中、同種プログラムに共通に利用されるノウハウ,ルーチン,モジュール(乙が従来より権利を有していたもの及び本件システム開発により新たに取得したものを含む。)に関する権利は、乙に留保されるものとし、乙はそれらを利用して本件プログラムと同種のプログラムを作成することができる。

?A乙は、甲から請求がある時は、甲に対し本件プログラムに関する権利移転についての登録手続きを行う。但し、登録手続きに関する一切の費用は、甲の負担とする。

 

7)「ソフトウェア取引の契約ハンドブック」(吉田正夫著、1989年、共立出版)より引用。なお同書では、ルーチンやモジュールに関する権利を受託者に留保した場合、当該ルーチン・モジュールについては編集著作物(法第十二条、編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するもの)に関する権利を取得したことになるという見解が示されている。

 

 

 

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