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花組芝居「悪女クレオパトラ」

1997年10月11日/世田谷パブリックシアター

スピーカー:加納幸和、佐伯誠

 

僕自身を批判しつつ、意図的に壊すっていう作業を今回はしたんです。

 

佐伯誠●加納さんは、立て板に水というか、お話しそのものが上手すぎちゃうんで、今日は途中でちょっかいを入れた方が面白いかなと思っているんです。今日はそれと10周年ということもあって、いろんなことを振り返りつつ、芝居の話を聞きたいなと。とりあえず終わって感想がありましたら。

加納幸和●昨年『素ネオかぶき ザ・隅田川』っていう作品を作りまして、これは劇団最初の作品で、8年前に再演して、いつかもう1回やろうと思ったんです。ただもう1回やることに関しては、なんていうんでしょうか、追想するような舞台には絶対にしたくないっていうのがあって、何か僕らが先へ進もうとしているという流れの中に『ザ・隅田川』を捉えて作りたいというのがあったんで、ちょっとその以前から紋付き袴で芝居をするというのもありなんじゃないかなと思っていたもんですから、よく能舞台なんかで紋付き袴でもって、趣味で歌舞伎なんかおやりになったりする海外の方がいらっしゃったりするんですね。その方、能も狂言もお稽古なすってるヨーロッパの劇団の方で、お勉強なすってて、能舞台を自分で借りきって、自分も能の人と実際にやって歌舞伎が好きだから教わりましたっていうんで、役者達と一緒にやったりしてたりして、あの人達がやってるんだったら日本人の我々もやらなくてはいけないと思って。大体芸術家って何と戦ってるかっていうと、結局自分の作品と生涯戦っていかなきやならないなあっていうのがあって、そういうことを言われてはいたんですけれども現実に自分もそうなってると思わなかったんですが、元の『ザ・隅田川』のイメージを越える、一掃するふうに作ろうと思ったんですけど、脚本の段階から悩みに悩んで、あの時は脚本家として逃げ出したくなった。今回はいつものように、稽古始めに脚本は仕上がっていたんですが、でも稽古が始まってから、この台本はやっぱりダメだねっていう話があって、もう1回ひっくり返して、2週間くらい書き直しの時間を作りまして、それはそれなりに楽しかったですし、良かったんです。そのあと演出の作業が間に合うとか、間に合わないとか。それに一旦作ったシーンを2回ぐらいぶっこわして、全部ゼロから作り直してたのが7箇所か8箇所ぐらいあって、今度は演出家として逃げだしたくなったっていうのがありまして。

佐伯●僕はベニサンピットで通し稽古っていうのを拝見したんですけれども、とても声をかけられる様な感じじゃないですよね。もう空気がぴりぴりしてるし、ましてや男所帯

 

 

 

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