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第3章 人材育成と連携した人事管理の取組事例

 

本章においては、地方公共団体や国における検討事項や取組事例、また、参考として民間企業における取組についてみていくこととする。

 

1 地方公共団体における取組事例

 

地方公共団体における人材育成や人事管理のための各種施策についての取組状況については前章でまとめたとおりであり、人材育成と人事管理とを明確に連携した取組はまだまだ少ないのが現状である。その中でも、人材育成と人事管理の連携へ向けての意欲的、先進的な取組の事例を紹介する。

東京都においては、平成8年8月に「東京都における能力と業績に応じた人事管理と人材育成〜時代の変化に適応した新たな展開〜」と題する報告書を作成し、当面の実施策、さらには将来的な方向性などについて言及し、庁内に広く配布している。

その中においては、今後は業績重視の任用・給与制度を中心としながら、職員の資質の向上を目的とした人材育成策の強化を含めた広い意味での成績主義の推進を図っていくこととしている。

まず、人事考課制度であるが、既に業績評価と合わせて、自己申告制度も導入している。今後は、「目標による管理」の手法を導入し、管理監督者と職員の十分な意思疎通を通じての職員の育成を図り、効果的、効率的に組織を運用していくこと、また、仕事ぶりを分析してきめ細かな人材育成を実現していく観点から、評定結果の被評定着本人への開示の必要性も提言している。

次に任用制度と人材育成については、研修については、中央研修と各局研修が有機的に連携をとりながら各種職層別、職能別研修が実施されている。しかしながら、人材育成の機会は研修に限られるものではないため、配置管理に育成の観点を取り入れる工夫をおこなっている。具体的には、配置を通じて育成を図るジョブローテーション方針の策定や、主任職や係長職に昇任する機会を捉えた昇任時局間異動の実施である。また、近年のように行政課題がますます高度化・複雑化していく中では、専門性の確保も求められており、専門職制度も平成5年度に設けている。今後は、昇任選考における適格者選抜を徹底するとともに、計画的なジョブローテーションや研修体系等をさらに一層充実させていくこととしている。

さらには、給与制度などの見直しも検討しているところであり、現在は各種施策の実施へ向けて、さらなる検討を行っているところである。

三重県においても、今後の行政改革の推進のため、効率性の高い行政システムを構築し、透明な行政運営を行うとともに、住民ニーズに的確に対応するため、人材育成についての基本目標、基本方針を定めた、「三重県人材育成ビジョン」を検討委員会を設置して、平成9年3月にまとめたところであるが、その中においても、人事管理における基本目標として、「能力開発型人事管理をめざして」という目標をかかげ、人材育成と人事管理の連携がうたわれているところである。

 

2 国における取組事例

 

国においても、社会経済システム全般の改革が求められる中で、行政の分野では、簡素で公正な行政の実現が求められている。さらに、近年、国家公務員の公務運営のあり方や公務員の人事管理についても、様々な角度から批判や提言が行われているところである。

これらのことをふまえ、人事院では、平成8年8月の給与勧告の際の報告において、現行の公務員の人事管理について全般的な見直しを行い、新たな時代に対応した人事管理システムの構築を目指し、制度、運用の両面にわたる改革に取り組んでいく旨表明し、具体的な課題として、人事管理システムの見直しにおいて、固定的な人事慣行等を見直し、意欲と能力のある職員の活用・登用

 

 

 

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