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3 問題点と今後の課題

 

地方公共団体の人材育成と人事管理の取組の現状から、人材育成と連携した人事管理のあり方に関する問題点と今後の課題として次の点を指摘することができる。

 

○基礎的条件の欠如

 

地方公共団体では、人材育成方策として職場外研修、職場研修、自己啓発への支援、他団体に対する職員派遣等が高い割合で導入されているが、研修等修了者に対する効果測定や成果の活用が必ずしも十分ではない。一方、人材育成、能力開発に資することが期待される人事管理方策として、昇任試験、庁内公募制、経歴管理システム、目標による管理等があり、これら全てを導入する必要性はないが、地方公共団体ではいずれも導入していない団体の割合が全体的に高くなっている。

また、人事管理の基礎とされる勤務評定を実施している団体の割合は、およそ半数であり、人材育成に関する評定項目の設定や評定者研修などに対する取り組みも不十分である。

こうした人材育成と人事管理の諸方策そのものが、必要かつ十分な取り組みがされていないため、その前提により成り立つ人材育成と人事管理の連携に発展しないものと考えられる。地方公共団体においては、長期的な視点を踏まえた政策を持って各種方策に取り組むことが不可欠であると考えられる。

 

○連携意識の欠如

 

人材育成と人事管理との連携を意識して取り組んでいる地方公共団体は、全体の約半数となっている。我が国では明治期以来から中央集権型の行政運営がおこなわれており、地方公共団体では多彩な人材やその育成の必要性があまり重要視されなかったこと、また従来から年功序列、減点主義的な人事管理がおこなわれており、人材育成と人事管理を連携させる必要性そのものがあまりなかったこと等が、連携意識が欠けている要因であると考えられる。

地方公共団体においては、今後、地方分権の時代を迎えるにあたり人材育成と人事管理の連携の必要性を十分に認識し、人材育成部門及び人事管理部門を担当する組織・職員の意識改革に取り組まれることが必要である。

 

○基本方針の未策定

 

今後の地方分権型行政システムにおいては、地方公共団体は自立性を持ち、自らの責任において行政運営をおこなうこととなり、その担い手である人材を育成することが喫緊な課題となっているが、人材育成を効果的に推進するための基本方針を策定していない団体が8割と高い割合となっている。

地方公共団体においては、人材育成の目的及びこれからの時代に求められる職員像を明らかにするとともに、その職員に必要とされる能力を出来るだけ効果的に育成するためにも、その長期的かつ総合的な観点で基本的な考え方を検討することは大変重要であると考えられる。

 

こうした問題点、課題が生じている背景・要因を考慮しながら、第4章において今後の地方公共団体への提言を行う。

 

 

 

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