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ケア資金供給局(United States Health Care Financing Administration)は、これらのサービスについて、慢性の心身障害をもつ高齢者に対し予防ケア、治療、リハビリテーション、支援および扶助料を提供すること、と記述しています。しかしながら、サービスの提供については規定された順序はなく、痴呆性老人は、さまざまなレベルの必要からヘルスケアシステムに加わり、さまざまな形でサービスを利用しています。

 

【痴呆性老人の長期ケアシステムとサービス】

○ システム :

・ 医療システム

・ 精神衛生システム

・ 高齢化サービスシステム

○ サービス :

・ 病院

・ 養護老人ホーム

・ 老人住宅・居住ケア施設

・ 在宅ケア

・ 成人デイサービス

上記にあるとおり、基本的に、施設ケアに関しては2種類の環境、施設以外については3種類のサービスが、3つのシステムの下で運営されています。すなわち、養護老人ホームと在宅ケア機関を含む医療システム、州立および民間施設とコミュニティの精神衛生センターを含む精神衛生システム、ならびに地区高齢化機関、家政婦サービスおよび栄養サービスを含む高齢化サービスシステムです。

 

1. 病 院

アメリカの病院は、長期ケアは提供しない急性ケア施設ですが、高齢者が急性疾患などで頻繁に利用することから、ヘルスケア・システムへの入口となることが多々あります。高齢者の入院状況に関する1991年の政府統計によると、65歳以上のおよそ3分の1が毎年入院しています。

痴呆性老人は、急性疾患にかかる以前も、数年にわたり、家族が介護にあたり、プライマリケア医師にかかりながら、大きな事変もなく過ごしている場合もあります。急性疾患によって慣れない環境に入院する必要が生じた場合、痴呆症状が悪化し、退院後、いままでとは異なるレベルのケアが必要となる可能性があります。必要なサービスを確保するためには時間がかかり、退院が遅れ、その結果、急性ケアの病床が、転院を待つ亜急性の短期滞在の患者のための長期ケア用の病床に変わっている病院もあります。

州立精神病院は、50年前は、痴呆性老人の長期施設ケアの大半を担当していましたが、現在では、長期にわたり精神病を患い、施設内で加齢とともに痴呆が進んだ患者が主となっています。ときに、精神病歴はないが、とりわけ他人に危害を及ぼす危険があると考えられるような急性の行動変化がみられた痴呆症患者が、評価・治療のために短期間の入院が認められる場合もあります。州立精神病院が看護する痴呆症患者は、全痴呆人口の3%に満たず、一般に老人精神病棟が中心となっています。

 

2. 養護老人ホーム

アメリカの養護老人ホームは、24時間の監視と熟練した介護を施すヘルスケア施設であり、また障害をもつ高齢者に正規の長期ケアサービスを提供する最も利用率の高い施設です。アメリカには2万以上の養護老人ホームがあり、入所者数はおよそ200万人、うち半数が痴呆症の診断を受けていると推定されます。養護老人ホームは次のようなサービスを提供しています。

 

【養護老人ホームのサービス】

○ 基本的サービス

・ 24時間の監視

・ 熟練した介護

・ 個人的ケア

・ 医師のサービス

・ 医薬品サービス

・ 諸活動

・ 行政サービス

○ 特別サービス

・ ソーシャルサービス

・ リハビリテーション−理学、作業、言語療法

・ ショートステイ

・ 家族支援グループ

 

アメリカの高齢者のうち養護老人ホーム入所者は、わずか4%足らずですが、痴呆性老人の大半は、やがては一定期間施設に収容されることになると思われます。

痴呆患者の比率が高いにもかかわらず、多くの養護老人ホームは、無意識的な行動に対処する管理上の問題や集中的なケアの必要性がきわめて高いことなどを理由に、アルツハイマー病患者の受け入れには消極的、あるいは拒否する場合があります。

なかには、スペシャル・ケア・ユニット(SCU)を設

 

 

 

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