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■ 発  表 ■

 

スウェーデンにおけるケアの現状・問題点および将来展望

 

スウェーデン/医療コンサルティング会社“オクトパス”代表

シャスティン・ルンドストロョーム

Kerstin Lundstrom

 

私が最初に日本を訪問いたしましたのは、笹川医学医療研究財団と日本財団が盛大に開催された高齢者ケア国際シンポジウムへの参加を依頼された1991年のことでした。

日本に対する印象がいつまでも消えなかったので、私は日本についてできる限り多くのことを学ぼうと決意し、また日本語も少し勉強してみることにしました。いまのところ「こんにちは。私はシャススティンです。あなたの名前は何ですか」というのが精一杯です。

これしか日本語を知らないため、私は少し無力感を味わっています。私たちのコミュニケーションは、もし私が日本語を話せたら、もっとスムーズにいくでしょう。しかし、この種のハンディキャップはだれもが受け入れており、語学の先生や通訳の方が問題を克服する手助けをしてくださいます。

このことで私が申し上げたいのは、障害には受け入れられているものとそうでないものがある、ということです。痴呆は、あまり話題にのぼらず、症状が重くなると、家族が内々に隠してしまう障害の1つでした。

痴呆症とは、共通の症状として記憶障害をもつ、多くの病気を総称する言葉です。

たとえばもしいまここで、自分がアルツハイマー病の初期段階だと分かったら、たったいま行ったばかりのことを思い出すのも苦労するし、また、スピーチを終えた後、自分がどこに着席すべきなのかも思い出せないでしょう。

 

スウェーデンでは、「痴呆症障害」という言葉は、痴呆症は障害を引き起こす病気だという事実を強調するために、最近ますます頻繁に使われるようになっています。

まず、スウェーデンの老齢人口に関する最近の統計を少し紹介することから始めたいと思います。880万人の人口を抱えるスウェーデンでは、約20%(160万人)が年金受給年齢(65歳以上)です。また、およそ42万人の人が80歳を超えており、さらに90歳以上では、女性がその79%を占めます。そのため必然的に高齢者のケアは、女性に多大な影響を与えます。男性は奥さんに助けてもらえますが、妻のほうは大幅に公共のケアやサービスに依存せざるを得ないのです。

西暦2000年には、80歳以上の人口がスウェーデンの老齢年金受給者の30%に達します。この割合は西暦2010年までさらに増加します。

 

スウェーデンには約17万人の痴呆患者がいると推定されています。もし、日本にも同じ割合があてはまるとすれば、日本では約280万人の人たちが痴呆症に苦しんでいる計算になります。現在、日本の公式な数字は、130万人になっています。

スウェーデンでの最も大々的な高齢者ケアの改革は、ADEL(エデル)改革といわれるものでした。いまや地方自治体が、高齢者と障害者の長期的サービスやケアの全体責任を負うようになりました。現在、高齢者と障害者のケアは、社会サービスの総予算の半分強、額にしておよそ660億クローネ(1KRは約15.6円)に達しています。

改革によって、31,000床強のベッドを有する約500の長期の身体的ケア機関が、郡の自治会から市町村へ移管されました。市町村は、今後、特殊なニーズを抱えた高齢者向けのサービスとケアのために、特別な形態の住宅、すなわち長期ケアのためのサービス・ハウス集合住宅と施設を建てなければなりません。

患者がまだ病院でケアを受けているものの、重大な治

 

 

 

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