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4. 研究の成果と課題

 

4.1 研究成果

 

平成9年度は、昨年度に調査した朝ラッシュ時の乗降状況および列車運行状況に基づいて、乗客誘導の実施基準を提案するとともに、乗客流シミュレータと列車運行シミュレータを組み合わせたシミュレーション実験により乗客誘導の効果を具体的に検証した。また、乗客誘導を実施するに当たって、設置場所に応じた効果的な案内表示の内容、方法についても検討した。さらに、この検討結果に基づいて40インチのプラズマディスプレイを用いて乗客誘導案内装置を試作し、一般の鉄道利用者を対象として評価実験を行った。これらより、以下のことが確認できた。

 

(1)乗客誘導の実施基準

到着時の混雑度、降車人数、乗車人数から乗車可能人数を定義した。また、乗車人数と乗車可能人数から乗客誘導を実施する基準を示した。そして、乗降状況の実測データを用いて乗客誘導の対象列車を抽出し、それらの列車が停車時分を短縮する必要があることを列車運行実績から確認した。

 

(2)乗客誘導による停車時分短縮効果

上記の実施基準を用いて乗客誘導の対象となる扉を特定し、4人〜10人程度の乗客を誘導すれば、少なくとも3秒〜8秒の停車時分短縮効果が見込まれる。西葛西では最小間隔で運転している21本のうち3本の列車で上記の効果が見込まれる。東陽町でも同程度の効果が見込まれるが、この中には等時隔運転を守るためには停車時分を短くできない列車も含まれている。また、茅場町では乗客誘導による停車時分の短縮効果は見込まれない。

 

(3)先行列車停車時分短縮による続行列車遅延防止効果

乗客誘導により停車時分を短縮すれば続行列車の機外停止時間も同じ時分だけ短縮できる。具体的には東陽町において、最小間隔で運転している28本のうち1本の列車で少なくとも3秒〜7秒の短縮効果が見込まれる。

 

(4)先行列車への乗客誘導による続行列車停車時分短縮効果

乗車可能人数に余裕がある先行列車の停車時分を延長することにより続行列車の停車時分を短縮することが可能である。具体的には西葛西において、最小間隔で運転している21本のうち1本の列車で少なくとも4秒の短縮効果が見込まれる。

 

 

 

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