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の手当を受け取る形の逆抵当計画がある。しかし、老後のこの代替資金源の方法は、資産を持っている一握りの高齢者にしか開かれていない。健康な高齢者、病気の高齢者の両方に資金を提供するより実行可能な方法を検討する必要がある。健康な高齢者を引き続き雇用することは、彼らの財政的保障を高める一つの方法である。

 

5. 雇用問題

 

長寿化と高齢労働者が高齢化社会での労働力不足を大きく緩和することに貢献するという認識から、政府は高齢者に対しできるだけ長く職場に留まるように奨励することになった。高齢者の雇用を促進するために、シンガポールの定年は、1993年7月の定年法の施行以来55歳から60歳に引き上げられた。定年は1999年には62歳となり、最終的に2003年には67歳となる。

 

定年延長には幾つかの利点がある。個人としては、55歳以降の継続雇用で経済的自立が延長され、自己の尊厳と社会への有益性の気持ちが高まる。経済の面からは、定年延長で労働人口が増加し、老年人口指数が低下する。推定では、定年を60歳に引き上げることで、労働人日は40,000人増加する(ストレイト・タイムス、1995年11月8日)。

高齢労働者を職場にとどめるには、雇用者側には高齢者雇用に対する奨励措置のような要因が必要である。1993年の定年法にもかかわらず、1995年の調査では、1983年から1995年の間に、雇用されている高齢者の割合は、男性、女性の両方について、全ての年齢で低下している事を示している(表11)。仕事をやめた理由として、大多数は「定年になった」ことを主な理由として挙げているが、それに続いて「子供からの充分な財政的援助」と健康の衰えを挙げている。これらの理由に加えて、理想的な老後とは、隠居して、くつろいで、勤労時代の収穫を楽しむことであるという社会的な認識から、高齢者が黄金の時代に職場に留まるよりは増えた余暇を通して満足を求めたい、と考えることになるのかもしれない。55歳に達した時に、全てのCPFの貯蓄を引き上げる資格(最低金額およびメディセーブの最低残高を除く)が、また、財政的保障の気分を高め、引き続き働く気分をさらに失わさせているのかもしれない。

 

 

 

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