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対する大きな依存は、一般的要素に加えて特別の要素を強調する姿勢を反映している。つまり、中国系住民の孝心という伝統的価値観を強化し、それに加えて同様な価値をマレー系とインド系住民にも強化することで、高齢者の家族のサポートを政府が強調した。

 

孝心は、伝統的に、高齢者のサポートの基礎を築いた。若者の近代化と価値観の変化で、彼らと子供との間に存在する世代間のギャップについての高齢者の嘆きを耳にするのも珍しいことではない。これが、高齢者への家庭の責任の低下の可能性についての政府の懸念が高まった理由である。高齢者ケアは家庭内で引き続き行われる事を確実にするために、進行中の高齢化についての国民認識プログラムを通して、孝心および高齢者への肯定的な態度などを奨励する様々な戦略を採用した。すなわち、両親と同居する若い世代への住居および所得税控除の奨励措置である。1997年度の税額査定で、高齢者の扶養家族と同居している人は、その高齢者に年間1,500Sドル以上の収入がないことを条件に、3,500Sドルの所得税控除を受けられる。1998年度の税額査定分については、最近、この額が4,500Sドルに増額された。それに加えて、親の扶養法が1995年11月に通過した。この法律では、孝心を合法化し、子供のいる高齢者が、そうでなければ子供から受けられないかも知れない財政的支援を受けられるようにするものである。

1996年からは、同法の下に、無視された親が子供に扶養を求めるための法廷が設けられている。同法についての批判があるにも関わらず、最初の6カ月間で100件もの訴えがあった。子供は自分の親の世話をすべきであるという考えもまた、CPFトップアップ計画に反映されており、子供が自分のCPFの残高を使って、親のCPF勘定の最低保障金額の足しにすることができる。子供に親のCPF勘定への負担をさせる奨励措置として、子供は負担額と同額について、年間最高6,000Sドルまでの税額控除が受けられる。

(3) 公的援助

政府は家族による高齢者の支援を強調する一方で、高齢の貧困者のための福祉の責任も担っている。シンガポールでは、一人暮らしで家族からの援助が全然または少ししかない高齢者の割合は比較的低い。1995年の調査では、一人暮らしの高齢者の割合は、75歳以上については比較的高くなっている(60-64歳の3%、65-74歳の2.9%に比べ

 

 

 

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