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ところで1970年代末までは、非婚カップルは、ほとんど子どもをつくることはなかったし、妊娠すれば結婚する決心をするのが一般的であった。1970年代は自由結婚が多く見られるようになった時期ではあったが、子どもを産み育てるためには結婚関係が重視されていたのである。結婚していない女性が受胎しながら出生時には嫡出子となったその赤ん坊(すなわち妊娠中に両親が結婚したケース)の割合は、1970年には10人に6人と高かった。しかしその割合は、1980年には10人に4人、1993年には10人に1人へと減少している。今日では妊娠したことを契機にして結婚に踏み切るカップルは例外的となった。

非婚カップルの子どもでも、両親が結婚した場合には嫡出子となる。婚外出生児は平均して3年後に嫡出子となっているが、嫡出子となる割合は下がってきている。例えば1975年に生まれた婚外出生児の場合は2人に1人は10年後には嫡出子となっていたが、1985年に生まれた子どもでは3人に1人である。

 

? 片親家族の増加

子どもが両親のうち片方の親と暮らす家庭は昔から存在していた形態だが、「片親家族(famille monoparentale)」という言葉がフランスで統計用語として初めて使われたのは1981年に過ぎない。統計用語では「配偶者のいない世帯主が、1人ないし複数の子ども(ただし配偶者も子どももいない独身の子ども)と暮らす家庭」と定義されている。

過去20年の間に、片親家族の数は63%も増加した。配偶者の死亡による片親世帯は、1968年には過半数を占めていたが(54%)、1990年には20%となった。逆に離婚による片親家庭は、1968年の17%から1990年の43%へと増加している。1990年の国勢調査では、片親世帯の総数は118万で、25歳未満の子どもがいる世帯では13%が片親家庭であった(1968年には9.3%)。片親家庭の子どもは約190万人いるが、これらの子どもたちは母親と暮らしているケースが多い(85%)。片親家庭で生活する0歳-4歳の子ども約22万人のうち、父子家庭は5%足らずに過ぎない。国立人口問題研究所(INED)の調査によれば、フランスの子どもの4人に1人、女性の6人に1人は、一時期にせよ片親家庭を経験している。しかし子どもの年齢が高くなると父子家庭の割合は増える(15歳-19歳層では16%弱)。離婚が成立すると、子どもが小さい時には母親に委ねる判決が出されることが多いが、子どもの年齢が高くなると、始めは母親に委ねられた子どもが父親と一緒に住むようになるケースがあるためである。

なお片親世帯はパリに集中している。パリでは25歳未満の子どもがいる世帯の23%が片親家庭で、全国平均を10ポイント上回っている。パリは就職先も多く平均収入も高いために片親でも生活が成り立つためであり、地方でも大きな町では両親が揃った伝統的な家族の割合が低くなっている。

 

 

 

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