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あるが、得られた予算をより良く福祉ニーズを充足できるように使うことも効率化である。例えば、同じ予算を公的部門だけで使うよりも、民間委託したり、非営利組織やボランティアを支援することによって、よりよく福祉ニーズを充足できる場合にはそうするのが効率化である。横浜市は横浜市福祉サービス協会を設立して介護サービスを行っているが、これも市自身が福祉サービスを行うよりも、企業的な長所を活かして弾力的に介護サービスを行うための工夫であろう。これからの自治体の福祉政策では市場の長所を生かすことと、ボランティアや非営利組織の介護サービスヘの補完機能を活かす工夫が大切になる。

第二は、こうした経済的要因の変化を反映した経済・福祉の理念と理論の変容である。経済面では政府の経済介入を重視するケインズ理論と福祉国家的理念に代って、小さい政府と個人の選択の自由を重視する新自由主義とそれを基礎づける新古典派経済学が精緻化されて再登場した。意識調査をみてもとくに若い人々は年金改革でも、医療保障制度の改革でも、かつては福祉サービスも給付ももっと拡大せよとの論が支配的であったが、最近では政府への過度依存を排して自己責任と市場を活かして行うべきだと言う傾向がある。

第三に、人口高齢化の予想以上の進展により福祉財政が困難になることが推定されるからである。神奈川県や横浜市は日本の中でも高齢化が余り進んでいない県なので、高齢化の政策対応には楽観的姿勢であったが、大都市では高齢化の速度に関しては現在の高齢化地域以上であり、日本自体が高齢者の人口に占める比率という点で先進国中のもっとも若い国から2020年以降は世界でもっとも高齢な国に転換するという理由が特に重要である。

 

(1) 福祉ミックス社会とは

 

福祉ミックス論・福祉多元主義は市場の役割りを重視する点とインフォーマル部門の役割を重視する点では、従来のスウェーデン型の福祉国家論とは異なる。しかし、新自由主義に同調するわけではない。社会のシステムには図表4-2-10のように(1)市場システム、(2)公的計画システム、(3)インフォーマル・システムという三つのシステムがあるが、それぞれの長所を生かしてその最適な組み合わせを実現するという形で、新自由主義の主張を取り入れつつも、福祉国家論を発展させようとするのが福祉ミックスの積極的理念である。図表4-2-10はM市場システム、G公的計画システム、Sイン

 

 

 

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